見出し画像

7インチ盤専門店雑記810「Sadeの12inchは凄いぞ」

シャーデーのアナログ盤は、時期的なことを考慮しなくても、あれば即買いでしょう。レア度高めな上に、すべてが高音質と断言してしまいます。7インチ盤もそこそこあります。…でも高値維持しておりますねぇ。気軽にオススメできるお値段ではありません。

ヘッダー写真のように、手元に12inchシングルが何枚かありまして、これがやはり妙に良い音で鳴ります。とりわけ無音部分の描写とでも申しましょうか、音と音の隙間、そこから立ち上がる瞬間の楽器の音、シャーデー・アデューが声を発する瞬間の描写、フェイドアウトの有り様などが、エラく美しいというか、リアルなわけです。12inchシングルは音が良いというのは当たり前のことですが、この描写力はどこからくるんだろうなどということを考えていると、あっという間に曲が終わってしまいます。

何を考えていたかというと、アナログ盤の時間あたりのデータ容量と、再生するときの音質の関係などですが、単純計算でいきますが、LP外周の直径29cmで円周率をかけると、91.06cmという長さが得られます。同様に7インチ盤の外周は直径16cmとして50.24cm、LPと7インチどちらも内周は直径10cmで31.4cmという溝の長さ=容量が得られます。

それをトレースする速度ですが、33 1/3回転だと1秒間に0.5555cm、45回転だと0.75cmとなります。LP外周だと1秒間に50.59cm、LP内周だと17.44cm、7インチ盤外周だと37.68cm、7インチ盤内周だと23.55cmとなります。それに対して、12インチ・シングルで45回転だとすると、外周で68.30cmもトレースしているんですね。やはりこの差なんですかねぇ…。

実際に計算してみると、LPと7インチ・シングルの差はあまり大きくないように感じてしまい、一方で外周と内周の落差が思っていたよりも大きいように感じますよねぇ…。ちなみにLPの真ん中辺り、直径16cmの周辺部分は1秒間に27.9cm、当然ながら7インチ・シングルの外周37.68cmよりは劣り、内周=曲の終わりの方の23.55cmよりは少しいいかもという程度なんですね。溝の太さや盤の重さでどれだけ振動対策になるかなど、その他の要因もありますから、一概には言えないんですけどねぇ…。

溝の太さは、ハードロック/ヘヴィメタルや爆発音、プログレの突然出てくるデカい音などでは重要かも知れませんが、シャーデーだとどうでもいいことのように感じます。むしろ溝を細くしても外周寄りに刻んだ方が良い音で聴けるように思います。そして、実際にそうしてあります。内周の無音部分が大きくとってある12インチ・シングルで45回転だと、さすがに文句なしの鳴りです。大ヒット曲「Smooth Operator」も素晴らしいの一言です。ヴォーカルをここまでリアルに描写できるのはさすがです。爆音で聴くものではありませんが、破綻がないか試しにボリュームを上げてみましたが、全くありませんね。…ジャケットは「やめときなさい」と言いたくなる酷い写真ですけどね。…何なんですかね、コレ。

「Is It A Crime?」の12インチも凄いですね。こちらはヘルムート・ニュートンの写真を使ったジャケットもいい感じですし、音質もこれでもかといったレベルです。特にここではB面の「Punch Drunk」という、「なんじゃ?」というタイトルの曲が気になります。もう聴いてもらうしかないと思いますが、物凄い音です。BGMで流しても、作業の手が止まってしまいます。

「Cherish The Day」の12インチは、00年リリースでした。92年の4thアルバム「Love Deluxe」収録曲ですから、アナログの時代ではないのですが、やはりアナログで聴きたい声ですよねぇ。低音のブースト感が心地よいです。限界ギリギリですけどね。

そういう意味では「King Of Sorrow」の12インチは有名リミキサーが名を連ねているのでしょうが、あきまへんという低音です。オーディオ・セットとの相性もあるのでしょうが、ウチのお店のスピーカーから鳴らすと地響きとともにボリュームを下げたくなってしまいます。低音のブーミーな感じが不快感となってしまう箇所があります。2001年リリースですが、全体的には物凄いクリアで素晴らしい録音なんですけどね。しかも実はこれだけ33 1/3回転です。…勿体ないといった印象です。

いずれにせよ、内周の無音部分が大きくとってあるカッティングは好印象で、しかも世界的に人気のある彼女のヴォーカルはアナログで楽しみたいものです。

いやはや、爆音で聴くシャーデー、凄いですよ…。

いいなと思ったら応援しよう!