7インチ盤専門店雑記463「俯瞰的な視点」
70年代に活躍したアーティストが80年代も頑張っていることはフツーにあることで、増してやルーツとして60年代から説き起こすことでイベントでの解説の厚みは増します。一方で、一発屋とまで言わなくとも、瞬間的な輝きというものは誰しもどこかしらで見せてくれます。それがアーティストのピークというものだったりもしますし、中にはピークを感じさせないアーティストもいます。瞬間的輝きしかないというケースは稀でしょう。
個人的にはアーティストの最初の輝きに上手く立ち会えたと思えることが嬉しかったりします。魅力的なデビュー盤を持っているアーティストのその後は大抵フォローし続けるので、浅く広く聴くような趣味嗜好になった原因の一つでもあるように思います。
例えばドゥービー・ブラザーズやレッド・ツェッペリンのように、どのアルバムも甲乙つけ難い出来のよさを誇るアーティストもいますが、一方でイーグルスはデビュー盤も魅力的ですが「呪われた夜」や「ホテル・カリフォルニア」といった大名盤もあって、俯瞰的に見ないと評価が違ってしまうことになります。増して各メンバーがソロでも活躍しているわけで、ピークがいつかなどという物言いが憚られます。
また別の例として、フォリナーというバンドは、デビュー当初、いろいろな有名バンドのメンバーが集まったスーパーグループのように言われるましたが、時が経つにつれてミック・ジョーンズが中心のバンドだという認識に変わって行きます。ヴォーカルのルー・グラムも実力派でしたし、イアン・マクドナルドまでいたわけですから仕方がありません。しかも80年代には音楽スタイルを変えたようにも言われるほど、魅力的なバラードのヒット曲を複数持っているわけですよね。
ただそこで話が終わると、この連中を見誤るわけで、衝突も多かったというルー・グラムとミック・ジョーンズはどちらもフォリナー以外の活躍もあるわけです。ルーはソロ・ヒット後、病気もあって生き方が変わったか、クリスチャン・ミュージックの分野でも活躍します。ミック・ジョーンズはヴァン・ヘイレン、バッド・カンパニー、ビリー・ジョエルといった連中の大ヒット・アルバムをプロデュースするわけです。結局実力のある人たちなんですよね。ミック・ジョーンズはいかにもギター・ロックが似合うギタリストですが、80年代のポップな楽曲でシンセ音を使いたがったのは彼だったという証言もあって、なかなか一筋縄ではいかない人間のようです。
ちょいと名前が出てきたヴァン・ヘイレンですが、衝撃のファースト・アルバムや大ヒット作「1984」があっても、ヴォーカルをチェンジしてヒット作を連発しますから、これも俯瞰的な視点が必要なバンドです。しかもサミー・ヘイガー期の音作りにはフォリナーのミック・ジョーンズが絡んでいたりするわけで、単眼的には語れないアーティストの代表だったりします。
エディ・ヴァン・ヘイレンは、映画「The Wild Life」のサントラやスティーヴ・ルカサーと一緒にやっている音源も含め、ヴァン・ヘイレン以外の活動にもやりたかったことが見え隠れしているようで、案外掘り甲斐があります。ヴァン・ヘイレン本体でやっていたことは、スーパー・ギタリストというスタンスを求める兄貴やレコード会社の意向みたいなものもあったのでしょうか…。
まあ、トーク・イベントなどというものは、こういった俯瞰的な視点が必要な連中がいて、そこを分かりやすく解説することで面白いものになるんですけどね。