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7インチ盤専門店雑記789「直立猿人のドラムス」

ここしばらく、思い切りジャズ棚をさらい直しておりまして、久々に針を下して懐かしいやら、予想外の音で「こんなだったっけ?」となっていたり、いろいろな感覚がグルグルしておりまして、随分ジャズを聴いてなかったなぁと我ながら驚いております。アシッド・ジャズやらはロックと同等に扱っておりますので、普段から聴く機会は多いのですが、モロ・ジャズはしばらく遠ざかっておりました。リー・モーガンとマイルス・デイヴィスは少しは聴く機会があるんです。…売れますから。

久々に聴いて悶絶していたのはチャーリー・ミンガスですかね。結構好きで、聴きまくっていた時期がありました。前職でシステム関連の仕事に関わっていた時期、ストレスも多かったかと思いますが、ミンガスの難解なジャズに対峙して何かしら見えてきたときの快感などで発散しておりました。…今考えると随分ヘンなことをしていましたね。まあ、危ない世界ですから、毒には毒をみたいなところでしょうか…。

聴き易さとは縁がないジャズですが、芯の太さみたいなものが他のアーティストとは比肩できないほどで、強烈な個性を感じておりました。そして「これを理解したい、理解しなければいけない」という感覚ですかね…。モノによっては、結構聴き易いものがあって、そういうところから攻略したとでも申しましょうか。まずはカフェ・ボヘミアのライヴです。煙草の煙がもくもくのジャケットが、自分のように生まれて1本も吸ったことがない人間でも格好良いかもと思わせました。まあ、ジャズ喫茶はどこももくもくでしたから、受動喫煙はしておりますね。

とにかく音が好きで、メリハリのあるベースの鳴りが堪りません。ベーシストのアルバムですから当然ですが、案外ここまでしっかりベースが聴ける録音は多くない気がします。アンサンブルの中心にベースがいます。そしてボヘミアでちょいと気になるのがドラムスです。フィーチャリングの3名はジャケットに名前が書いてあって、おまけにスペシャル・ゲストのマックス・ローチの名前も書いてありますけど、実はマックス・ローチは1曲のみ「パーカッション・ディスカッション」でのみ叩いております。この曲、打楽器のアンサンブルですからね。表側には一人だけ名前が書いてないドラマーがもう一人いらっしゃるんですよ。ウィリー・ジョーンズ Willie Jonesという人が全編通しで叩いているんですけどね。…なんか可哀想です。

この名前でピンとくる人は少ないですかね…。私ね、この人が「直立猿人 Pithecanthropus Erectus」でも叩いているのを何でか記憶しておりましてね。こちらは、ミンガスに加えて、ジャッキー・マクリーン、J.R.モンテローズ、マル・ウォルドロン、そしてウィリー・ジョーンズなんですよ。他は一応有名人と申しましょうか、日本では人気のジャッキー・マクリーンやらマル・ウォルドロンに混じって「なんやよう知らんけど…」なドラマーさんがいらっしゃるので、いろいろ調べたんです。リーダー作はなし、モンク、エルモ・ホープ、サン・ラといったあたりのサイドメンとして参加しておりまして、まあ地味な方です。…だから気になってしまったんですけどね。

久々、ジャズの7インチ・ボックスを整理していて(…場所を動かさないで~、元の位置に戻して~)、直立猿人を見つけたときに、真っ先にこの人の名前が浮かんできてしまいましたよ。…この7インチ盤には、ちゃんとクレジットされておりますよ。…しかし、地味だなぁ、この人。本来なら、1分半あたりから思い切りドシャドシャ叩かんとアカンでしょ。

ま、猿人は大音量で鳴らすべきものですね。没入感がサイコーです。


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