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7インチ盤専門店雑記560「jazzじゃないけど…」

レコ屋を兼ねたカフェめし屋ですから、本来BGMはデモンストレーションも兼ねてアナログレコードで鳴らしたいわけです。でもいつもそんなに余裕はないわけで、平日ランチではHDDプレイヤーで流しっぱなしにしております。翻って、ディナータイムや土曜日は極力アナログレコードで鳴らしたりするわけです。

まあヴェテランの音楽好きばかりが集まってくる店でもありません。レコードが回っているのを初めて見たというお客様も多いわけです。中にはCDを初めて見たという大学生もいらっしゃるわけです。…コチラもビックリしてしまいます。でもレコードに関して素人であれ、大事なお客様であることにはかわりません。軽くレコードのかけ方や音のよさを説明したりもします。

大変素人ウケの良いレコードというものもありまして、ヘッダー写真のノラ・ジョーンズのライヴ盤などは土曜日に重宝します。まずは盤が黒くないこと、白盤をカラー・ヴァイナルと言っていいものかは分かりませんが、黒くないことでまず「引きはOK」となります。大半は黒いが実はいろいろな色があること、ヴィニール素材を固くするために炭素を混ぜたから黒いこと、音は変わらないが昔あった東芝の赤盤というものは音が固い傾向にあること、同じタイトルでもいろいろな色の盤がリリースされることもある、単色ではないマーブルやらいろいろある…などなど、次から次へと語ってしまう、おしゃべりオジサンです。

そして、この盤、RSD記念リリースですが、意外なほど音がいいんです。一曲目からヴォーカルが優しく広がります。アナログの音、いいでしょ…となります。ただ一つ難点があります。先日も若いカップルの女の子に切り返されたのですが、「これ、ジャズですか?」と言われるんです。「いや、ジャズじゃないけど…」と窮してしまいました。「ジャズじゃあないけど、では何?」ジャンル分けできませんね…。「元はジャズとカントリーの融合とか言われていたんですけど、ジャズのテイストはどんどん薄くなってきましたね」程度に返すしかできなかったのですが、レコードを聴かせるお店ではジャズが流れていて…という何の根拠もない情報にとらわれていらっしゃるようでしたから、たまたま出ていたトム・ペティとかも鳴らしてあげましたけどね…。

ノラ・ジョーンズっていつの間にか、一つのジャンルみたいになってますね。なかなかどうして、ここまで個性を確立しているミュージシャンも少ない気がします。初期のテイストで続ければ、それなりに売れたでしょうが、飽きられたかもしれないとも思います。毎度違ったテイストでアルバムをリリースしてきたからこそ、他のアーティストからもリスペクトされる今のノラ・ジョーンズがあるわけで、違ったテイストでも一聴ノラ・ジョーンズだと判る声質もさることながら、いい曲を作り続けていますからね。売れたアルバムも、そうでないアルバムもあるようですが、他のアーティストとのコラボもかなり積極的にやってらっしゃいますし、他には無い、なかなか凄い存在になってしまいましたね。

先日のカップル、ノラ・ジョーンズのレコードがたいそう気に入られたようでしたが、レコード沼にハマるところまでは行かないのかなぁ…。確かにおカネはかかりますよ。音楽はタダで聴ける時代かもしれません。一歩踏み込むと素晴らしい趣味の世界が広がるんですけどね、どうしても少々お代をいただくことになります。…豊かな人生への投資なんですけどね。

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