7インチ盤専門店雑記577「ロック逍遥2:レオ・セイヤ―~ロジャー・ダルトリー~アージェント」
レオ・セイヤーのプロフィールを見ますと、必ずミュージシャンのデヴィッド・コートニーに見出されたとありますが、では「デヴィッド・コートニーって誰?」となります。結局デビュー後のレオ・セイヤーの才能と個性が物凄いことになって、デヴィッド・コートニーはレオ・セイヤーのところのキーボーダーで作曲もする人というのが最も分かり易い説明かと思います。
さて、ヘッダー写真は、ザ・フーのヴォーカル、ロジャー・ダルトリーのソロ1作目、1973年リリースの「ダルトリー」です。この盤、レオ・セイヤー絡みの音源で埋め尽くされております。デヴィッド・コートニーとレオ・セイヤーの共作曲が9つ、コートニーとアダム・フェイスの共作が2つ。他はないので全部レオ・セイヤー絡みと言ってもいいわけです。しかも、レオ・セイヤーのレコード・デビューと同年のアルバムです。デビュー前から騒がれていたということになりますかねぇ。だってレオ・セイヤーのファースト・アルバム「シルヴァーバード」は73年と言っても11月リリースですからね。
A-1「Giving It All Away」は、思い切りロジャー・ダルトリーの個性で塗り固められておりまして、レオ・セイヤーのセカンド・アルバム「Just A Boy」収録の作者ヴァージョンを聴いても、レオ・セイヤーがカヴァーしたと思い込んでおりました。随分後になって諸々知るわけですが、それでもロジャーっぽい曲だなという思いは変わりません。彼も何気に個性的な歌い手です。ザ・フーのときと違う部分を見出すことが、こういったソロの聴き方の基本かと思います。
この盤、演奏者も面白くて、ドラムスはキース・ムーンではなくて、アージェントのボブ・ヘンリットが叩いております。また同じくアージェントのギタリスト、ラス・バラードが弾いている曲もあります。ラス・バラードはレインボーのヒット曲「Since You Been Gone」や「I Surrender」の作者ですね。ボブ・ヘンリットは80年代後半からはキンクスで叩いていた輩でして、ブリティッシュ・ロックの深い森の住人です。
この時期、ロッド・アージェントはゾンビーズの盟友コリン・ブランストンの名作のお手伝いで忙しかったかなと思いきや、ボブ・ヘンリットもラス・バラードもコリン・ブランストン盤に参加しておりますな。…ロジャー・ダルトリーが贅沢言っただけっぽいですね。アージェントって日本では人気がないんですけど、知人の英国人なんかヒット曲「Hold Your Head Up」を名曲だと褒め称え、同曲が収録されたアルバム「All Together Now」を大名盤だと言いますからね。…正直ビックリするくらい日英で評価に差があります。…米国ではどうなんでしょうね?「All Together Now」は少しは売れましたけどね…。
まあ、そんなわけで、ザ・フーの「四重人格」制作と時期を同じくしてロジャーくんはこんな楽しいことをやっていたわけですが、そんなことからも、ピート・タウンゼントが作り込んでいる間、他のメンバーはヒマこいていたのかななどといったことが垣間見えるようです。
個人的には、ザ・フーも、アージェントも、レオ・セイヤ―も大好きなので、この辺の事情が面白くていけないんですけど…。