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7インチ盤専門店雑記765「フィニアス・ニューボーンJr.」
先般気温が下がってきたところでジャズが聴きたくなったという趣旨のことを書きました。そして半日ビル・エヴァンスを聴きました。…さすがに飽きまして、何か趣きの違うものということで、フィニアス・ニューボーンJr.の「ハーレム・ブルース」をターンテーブルにのせまして、「やっぱり、いいねぇ」となっておりました。
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そんなに多く聴いているピアニストではありませんが、…というか有名盤がさほど多くありません。これでもこのアーティストに関しては、結構聴いた方なのでしょうか。まあ、天才肌のピアニストです。上手いとか下手というものさしではなくて、演奏は完璧という気がします。このフレーズ以外はあり得ないと思わせる、実に端正な演奏です。そして「ハーレム・ブルース」というタイトルが意外に思えるドライヴ感が嬉しいアッパーなピアノが心地良いものです。メンタルの不調でしばらくお休みした後の復帰作なのですが、そんなことは微塵も感じさせない元気な演奏です。
1969年に録音された音源ですが、レコードとしてリリースされたのは1975年になってからです。レイ・ブラウンとエルヴィン・ジョーンズを擁したトリオですが、時期がよくなかったですかねぇ。
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ただこの曲は彼の典型的な演奏ではありません。検索した場合は1956年のファースト・アルバム「Here Is Phineas」や61年の「A World Of Piano!」なども出てきます。というかこちらが代表作でしょう。ジャズを勉強し始めた頃、ベーシストの聴き比べが面白くてハマりました。「Here Is Phineas」はオスカー・ペティフォードの、そして「A World Of Phineas」はポール・チェンバースとサム・ジョーンズの、それぞれの演奏が聴きたくて、この2枚を随分聴きました。ベーシストにとっては代表作でもないでしょうが、ピアノ・トリオやカルテットの最良のアンサンブルがここで聴かれると考えます。ともあれ、好きな盤です。
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そして1986年録音1990年リリースの「C Jam Blues」というアルバムも出てきますかね。「C Jam Blues」といえば、レッド・ガーランドでしょうが、私はフィニアスの「C Jam Blues」も好きですねぇ…。ベーシストはレイ・ブラウン、ドラマーはマーヴィン・スミッティ・スミスです。私よりも年下の若いドラマーを起用したトリオ作ですが、時代が時代ですから音が猛烈に良いということと(ミキシング等は日本で行われています)、レイ・ブラウンが凄いベースを聴かせていたりで、なかなかに隠れた名盤かと思います。
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また、触れないではいられないのがロイ・ヘインズのアルバム「We Three」ですが、ロイとフィニアスとポール・チェンバースのピアノ・トリオですから、フィニアスのアルバムと考えてもいいようには思います。ここでもポール・チェンバースとのアンサンブルが好きですねぇ…。超絶技巧バチバチかと思いきや、そうでもないリラックスした演奏で楽しませてくれました。
ちなみに「We Three」も音が猛烈良いです。やたらと上手い人たちですから演奏に耳を持って行かれますが、オーディオ的にも楽しませてくれます。