さらまわしネタ帳116 - 作者の意図
「7インチ・ボックスからひとつかみ」みたいなお気楽さで次回以降の企画を練っているのですが、好きな曲はそれなりに限られているし、それが語り易い曲かどうかはまた別問題ですしね。結局のところ、あれこれ試して背景にあたってみたり、カヴァー曲もついでに聴いてみたり、楽しい作業ではありますが、傍から見れば探し物でもしているような様相なんでしょうかね。
ヘッダー写真のポール・ウィリアムズ、名曲をいっぱい書いていますから、他人への提供曲だけでも結構面白いラインナップになりそうです。1970年代初頭、カーペンターズやスリー・ドッグ・ナイトといったヒットチャート常連組に提供された曲はいずれも素晴らしく、機会があればかけたい曲だらけです。しかも、この人の場合、原曲というのか、作者ヴァージョンも素晴らしいわけで、聴き比べとかしたくなる筆頭です。
ポール・ウィリアムズといえばロジャー・ニコルズとの共作曲のほうが注目されてしまうのでしょうけど、あえて単独で作詞作曲を手掛ける意味があった曲として思い浮かぶのが ↑ これ「オールド・ファッションド・ラヴ・ソング」なんです。スリー・ドッグ・ナイトのヴァージョンは、ビルボードのヒット・チャートで4位までいく大ヒットとなりました。日本でももの凄い人気で、1971年の年末ごろはラジオでかかりまくっていたのを憶えています。
結局曲と詞が思い切りリンクしているんですよ。詞が先か曲が先かは別として、後付けでやることは当然多いわけですけど、この曲に関して詞と曲の関係性が深すぎて「こりゃ無理だよな」と思ってしまうわけですね。まあメロディも秀逸なのですが、そこに上手くディキシーランド・スタイルのカウンター・メロディを織り込んでいたりするわけで、「なるほどオールド・ファッションだ」と納得してしまうんです。文字にするとそんなことかと思われるかもしれませんが、その技があまりに高度で、聴くたびに頭が下がる思いをしてしまいます。
一方でヒットしたスリー・ドッグ・ナイトのヴァージョンはその部分をきれいに取っ払ってしまっているわけです。これねぇ、作者さんはどう聴いたのかなぁという点が気になってしまうんですよ。自作曲がヒットするのは嬉しいでしょうけど、「お前ら理解してねーのか」と言いたくなるんじゃないですかね…?
個人的には両方とも好きなので、何とも複雑な心境にならざるを得ません。いまでこそ、やはり作者ヴァージョンを大事にしてあげたい気分にはなりますが、スリー・ドッグ・ナイトも上手いですからね。3人いるヴォーカリストのうち、この曲はチャック・ネグロンの声だと思いますけど、やはり完成度が高いんです。意図してディキシーランド風味を削ったとして、結構ノリのいいリズムでグイグイくる曲構成にしています。ヒットしたのだから文句はないだろうと言いたいでしょうかね。…やっぱり聴き比べもしてみたいなぁ。
以前、「オー・ウェル」の聴き比べとかしたとき、局内で不評だったみたいなので、ちょいと遠慮してしまうんですけどね…。まあ、普通ラジオを聴いていて、同じ曲が繰り返し出てきたらヘンなのかもしれませんけどね。うーん、やりたいなぁ…。