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7インチ盤専門店雑記819「アメリカン・スタンダード」

クリスマス・ソングの定番はいろいろあるのでしょうが、どうしても毎年聴きたくなるのはイーグルスの「ふたりだけのクリスマス」ですかね…。ロッカバラードのゆったりリズムがこの季節のせわしなさを諭してくれるようです。…どうして師走って、こうもせわしないのでしょうか。私の師走は、朝から酷い渋滞のなかにいて、諦めムード満点で一日が始まりますから、 この曲のようなゆったり感がちょうどいいのかもしれません。

でもここ数年、この時期になると聴きたくなる盤がありましてね。クリスマス・ソング集ではないのですが、「God Bless The Child」も歌っていますから、この時期向けではあります。…というか、そういうことを想定して作りましたかね。ヘッダー写真のジェームス・テイラー「アメリカン・スタンダード」ですが、もうこの時期に最高の一枚です。コロナ禍が始まって、世界中が大騒ぎになった頃にリリースされたアルバムですが、音楽に癒しを求める人に届いたのでしょうか。

以前から何度も書いておりますが、私個人は音楽に癒しを求める人間ではないので、あまり縁のありそうにない盤なのですが、アメリカン・フォークソングの研究をしている手前、このタイトルのアルバムをジェームス・テイラーがリリースしたとなれば、買わざるを得ませんでした。アメリカン・スタンダードと言っても、カントリー・テイストが強いとどうでもよくなる傾向にあるので、実はちょうどうってつけの盤なんですよねぇ…。

ホント、ちょうどいい程度にジャジーなところもあり、2020年時点でのジェームス・テイラーの趣味嗜好を表しているようにも感じます。彼のゲスト・アピアランスの経歴を見ると、決してジャジーではないのですが、マイケル・ブレーカーやらも出てきます。言ってみれば、ヨー・ヨー・マもあれば、ウェストコーストの名だたるアーティストがゴソッと出てきますから、イメージ通りの活動に加えて、いろいろやってきましたという経歴が音に現れているのでしょう。

まあ1曲目の「My Blue Heaven」で「嗚呼、名盤だ」となります。2曲目「Moon River」が意外なほどサラッと歌っており、ここではニヤニヤしてしまいます。…いいんですよ、これで。もう、ここまでで大満足確定です。「Moon River」は、オードリー・ヘップバーンのテイクを聴いている回数が圧倒的に多いもので「比較的…」という話ですかね。

アメリカという国のルーツを探るような音楽の聴き方をしていると、ブルースやジャズもありますから、実に多様で呆れてしまうこともあります。…でも、スミソニアン博物館のボックスを聴く時や古い映画から情報を探る時のような聴き方をするとき、個性的な歌い方などはあまり求めていないんです。ロッド・スチュワートの21世紀の一連のアルバムも、実に有り難い存在ですが、ジェームス・テイラーの「アメリカン・スタンダード」は、あえてそういうタイトルを冠したわけで、個性を排除したとまでは言わないまでも、そのサラッと感が心地よかったりするものなんです。

しっかし、良い音で鳴る盤ですね、コレ。お店で流すと店全体の空気が変わってしまうような感覚に見舞われます。このアナログ盤、おススメです。

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