7インチ盤専門店雑記510「銭は紙くず」
先般「Jackson-Kent Blues」について書いたスティーヴ・ミラー・バンドですが、途中から売れ線狙いになったという方もいて、産業ロック的に捉えられる文章にも出くわすので、ちょいとあらためて聴いたりしております。産業ロックのイベントで取り上げるつもりはありませんが、まあ7インチ盤も面白いんですという程度で、いくつかご紹介しておきます。
ともあれ、インパクトのある邦題です。「銭は紙くず Your Cash Ain't Nothin' But Trash」ですよ。好きだな~、こういうの。「愛の〜」とか「哀しみの〜」とかいった手抜き邦題ならつけない方がいいと思いますけどね。
1973年10月にリリースされた「The Joker」のタイトル・チューンがナンバー・ワンになり、年が明けてからリリースされた同アルバムからのセカンド・シングルですが、なんか勢いを感じてしまいます。そもそもこのアルバム、13歳の時ですが、ほぼリアルタイムで購入しました。ナンバーワンもへったくれもない、謳い文句の一つもない帯が残っております。中坊にとって2,200円は決してお安いものではありませんでした。自分が持っているレコードがナンバーワンになるという経験を初めてしたものです。母親が買ってきたWAR「世界はゲットーだ」もナンバーワンになりましたけどね…。渋いのが売れた時代です。
「銭は紙くず」のシングル、日本国内では1974年4月5日発売でしたから、アルバム・リリースから随分時間が経ってますね。アメリカと日本ではまだタイムラグがあるような時代ですから、少し感覚が違うと思います。一応ビルボードでは51位までいったようです。この曲、作者はChuck Calhounとなっておりますが、「Shake, Rattle and Roll」の作者ですね。ミュージシャンとしてはJesse Stoneと名乗ったようです。
Jesse StoneのWikipediaを見ますと、以下のように書いてあります。
しかし、何でAhmet Ertegunの名前が出てくるんですかね?アーメット・アーティガンってアトランティック・レコードの会長さん、…駐米大使の父をもつトルコの富豪ですよね。何で彼の名前がここで出てきますかね?
そもそも初期のスティーヴ・ミラーってあまりシングル・リリースに積極的じゃない人なんですよね。アルバムの数のわりにシングルは少ないですから。ついでに触れておきますと、「The Joker」の作者はリリース当初はスティーヴ・ミラーとなっておりました。
それがWikipedia等で見ると、(Steve Miller, Eddie Curtis, Ahmet Ertegun)となっております。Eddie Curtisというのは、昔のコンポーザーで、彼の「Lovey Dovey」という曲のラインが似ているということでこうなったようですね。ところで、何でまたAhmet Ertegunの名前が出てくるんですかね?まあ、作曲もされる、もの凄く音楽に造詣が深い人ですけどね。でも何で出てきますかね?ちなみに、この曲のイントロはアラン・トゥーサンの「Soul Sister」に似ていると言う方もいらっしゃいますね。こちらは、ブルースなんてみんな似たようなフレーズでしょ…とかいう程度でいい気もします。そんなに似てますかね?
「銭は紙くず」、音の生々しさはピカイチの見本盤7インチ・シングル、かなりレアな一枚です。70sの空気感も満ちており、サブカル近現代史のネタとしても面白いと思います。