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7インチ盤専門店雑記893「優先順位」
もう時間がないという感覚がやたらと強くなっておりまして、これまでのように「ランキングなんて失礼な…」というスタンスを維持するのは難しくなってしまいました。これまでは良いと感じる音楽は悪食なまでに何でも聴いておりました。そこは優劣や序列を極力排した世界であり、自分の価値観に平等な機会を設けるオープンなフィールドだったんです。でも残された時間が多くないという感覚が強まり、自分が本当に好きなものを聴く時間を大切にしたいと思ったとき、序列というよりは優先順位を設けるべきとなったわけです。
自分は生まれてお初のライヴが、1975年11月のエリック・クラプトン2度目の来日だったんです。それから来日するたびに足を運び、結構な回数のライヴを観てきました。ジェフ・ベックと一緒のステージに立ったさいたまスーパーアリーナでのライヴや、スティーヴ・ウィンウッドと一緒にやったのも観ました。まあ洋楽の歴史において語られるべきライヴをいくつも目撃してきました。
それでも、10年ほど前頃から「エリック・クラプトンはもう卒業かな」という感覚が芽生え、ほとんど聴かなくなってしまいました。コロナ前、お店を始めて数年経つまでは、アナログもデジタルも新規にリリースされるものは全て買うというトップ・プライオリティではあったんですけどねぇ…。今となっては全然聴かなくても問題ないわけで、…他にも聴きたいものが多すぎるんですかね…。
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ということで、CDからどんどん売り払っております。場所をとっているボックスものは特に優先順位を上げてしまいました。整理したいものは山のようにあるわけで、愛着のあるアナログは後回し、デジタル・メディアを優先して処分しております。この辺は心配しなくても、欲しい人はいくらでもいらっしゃるでしょう。
この辺で気をつけなければいけないのが、魅力的なブックレットだったりします。音源は音質面でこだわらなければいつでも聴ける世の中になってきました。特にメジャーなアーティストは、もうウェブ上で聴けない音源を探す方が難しいわけで、ボックス・セットのボーナス・トラックがどれだけ魅力的かということにも繋がります。相変わらず紙の本が好きとか言っている人間ですから、アナログレコードに拘るのと似た感覚で、CDボックスに封入されたブックレットに魅力を感じていたりするもので…。でもそんなことを言っている場合ではないんですよね。売れるときに売る、欲しい方がいればラッキー程度でどんどん動かなくてはいけませんね。…終活、終活。
そんなわけで、常連さん向け待機中CDボックスの山でいつもよりオーディオ周りが狭くなっております。お取り置きレコードも凄い枚数になっております。笑い話のような状況のレコ屋兼カフェめし屋です。…事情が分かっていらっしゃる常連さんの冷笑が、痛いような、救いのような…、楽しんでいる場合ではありませんけど、呆れつつ楽しんでおります。