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7インチ盤専門店雑記556「アンティシペイション」

カーリー・サイモンの7インチ・シングルは、「うつろな愛 You're So Vain」や「007 私を愛したスパイ Nobody Does It Better」など、一部の大ヒット曲を除いて、妙に入手困難になっております。むしろこの2曲はやたらとありますねといったところですけど、他が手に入りません。非常にクオリティの高いアルバムをリリースし続けておりますから、アルバムの方が売れるアーティストだったのでしょうか。

シンガー・ソングライターというカテゴリーでよろしいかと思いますが、他の人が書いた曲も歌うので、あまりソングライターとしての部分が目立ちませんが、いい曲を書きます。ドゥ―ビー・ブラザーズ在籍時のマイケル・マクドナルドと共作した「You Belong To Me」なども名曲だと思います。…「私を愛したスパイ」はキャロル・ベイヤー・セイガ―とマーヴィン・ハムリッシュが書いた曲ですけどね。彼女が書く曲の個性が見出せず、いちいち調べることになります。

この人、サイモン・シスターズとして60年代の中頃から活動しておりますが、そもそも彼女、米国大手出版社Simon & Schusterのリチャード・L・サイモン氏の娘さんでして、超お金持ちの家に生まれたお嬢様だったんですね。彼女の恋愛遍歴やら調べるとまあ恋多き女ですが、何だか天然なところを感じる部分もありまして、家系のせいかいなと思わなくもないわけで…。超お金持ちのお嬢さんで美人さんだと、男はやりづらい部分がありそうな気もしますし、少し気の毒な印象もあったりします。

7インチ盤専門店的には、1972年の特大ヒット「うつろな愛」ばかりざくざくあることになりまして、タダで配りたくなるほどの状況です。アルバムもシングルも1位ですからね。こういった大ヒットをもっていると、それ以前のシングルがレア盤化しやすいのですが、この人の場合「うつろな愛」収録のアルバム「No Secrets」がサードですから、その前は前年リリースの2枚のみ、ファースト・アルバムからはデビュー曲「幸福のノクターン That's The Way I've Always Heard It Should Be」だけがシングルです。セカンドからは4曲もシングル・カットしますが、一般的に有名なのは「アンティシペイション」ですね。…この年のグラミーで最優秀新人賞を受賞しております。「幸福のノクターン」は最優秀女性ポップ・ヴォーカル賞も受賞しておりますね。…デビュー曲でいきなりですか。お父さんのお力を感じなくもないですが、まあ、いい曲です。

ヘッダー写真の「アンティシペイション」のシングル盤は、「うつろな愛」の大ヒット後に再発されたものですが、B面がデビュー曲「幸福のノクターン」でして、大変ありがたい一枚です。それなりの枚数は売れたようで、中古盤店ではたまに見かけるものです。…ま、今回、このシングルに針を下してみたら、両面ともえらくいい音で鳴るので、なんじゃらほいとなったわけです。

どちらもクレジット・オタクとしてはへぇ~、へぇ~、へぇ~な、なかなか凄い内容です。まず、ファーストはエディ・クレイマーがプロデュースしてエレクトリック・レディ・スタジオで録音されておりますな。ほぉ、ほぉ、ジミヘンが死んでしまった翌年にこの方が使っておりましたか…。メンツは…いろいろ言いたくなりますが、ジェフ・バクスターとか、トニー・レヴィンとか凄いのがいますね。あぁ、デヴィッド・ブロムバーグがギターを弾いていたり…、1971年にこれはねぇ…、経費は関係ないのかも…。こりゃいい音で鳴るのも当然かもですね。

この人、ファーストとセカンドの間の時期に、トルバドゥールに出演していたキャット・スティーヴンスの前座を務めたことがあって、その時にフラれているんですよね。セカンドのタイトル曲「アンティシペイション」って、キャット・スティーヴンスへの恨み節というか、「世の中上手くいかねーわ」という歌詞なんですね。んでもって、こちらは何故かロンドンのモーガン・スタジオで録音されておりまして、プロデュースはヤードバーズのポール・サミュエル・スミスですね。…キャット・スティーヴンスのプロデュースとかもしている人でしたねぇ…。だから彼の人脈で、キャット・スティーヴンスの「雨にぬれた朝」はリック・ウェイクマンがキーボードを弾いているとか、オーディオテクニカの誰かさんが言ってましたっけ…。

ああ、何か寒くなってきましたねぇ…。

両面ともエラくいい音で鳴る再発シングル盤があってさ、気になって調べてみたら、何か女性観とか人生観とか揺さぶられる思いをするほど…感動した…ならいいんですけどねぇ。

うーん、恋多き女かぁ…。

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