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7インチ盤専門店雑記580「ロック逍遥5:アージェント~ザ・フー」
フツーのロックをかけるイベントがあるので、準備を兼ねて英国ロックの美味しいところを逍遥しておりますが、脇道に入り込むとエンドレスになってしまいますので、今回で一旦終わらせるつもりで書きましょう。
昨日、ゾンビーズ~アージェントのロッド・アージェントについて書きました。1978年の「Moving Home」というアルバムにフィル・コリンズが全面参加していることが面白いということだったのですが、そこにゲイリー・ムーアがいたりして、彼もコロシアム~コロシアムⅡの周辺人脈でもあることが窺われます。コロシアムⅡはコラボレーターのジョン・ハイズマンがいたり、ソロ・アルバムをサポートしてもらったゲイリー・ムーアがいたり…ということです。コロシアムⅡを語り始めると、ニール・マーレイとドン・エイリーもいますからホワイトスネイクにも繋がってしまいます。でもそっち方面は自分が書かなくてもあちこちに記事があるでしょうから、今回は入り込みません。
ヘッダー写真は1988年のロッド・アージェント「Red House」のアナログ盤です。1988年ですから結構レアかと思いますが、プレミアムな価値があるかというと、何とも言えませんけどね。この盤のメンツがいかにもな英国ロックの深い森の住人たちなんです。まずドラムスはピーター・ヴァン・フック、マイク+ザ・メカニクスやポール・キャラックなどをサポートするドラマーです。昨日彼について2005年に書いた下町音楽夜話を1本アップデートしておきました。
ベースはモ・フォスターとデイヴ・ブロンズですね。モ・フォスターは数えきれないくらい多くのセッションをこなしていますが、フィル・コリンズ、ジェフ・ベック、ジェリー・ラファティ、ヴァン・モリソン、スティング…などなど、錚々たるメンツです。デイヴ・ブロンズの方はドクター・フィールグッド、ミック・フリートウッド・バンド、プロコル・ハルム~ゲイリー・ブルッカーあたりのベーシストです。ギターはクレム・クレムソン、コロシアムやハンブル・パイですね。…もう英国ロックのかなり深いところまでたどり着いてませんかね。この辺のメンツがあちこちで面白いアルバムを作っているわけですよ。そういった人たちが1988年のロッド・アージェントのプロジェクトに集結しているわけです。この辺の人脈を辿るのがお好きな方々(…いますよね)にはウケるアルバムだと思います。
結局、レオ・セイヤ―から本当はサザン・ロックのウェット・ウィリー経由でアメリカを逍遥しようと思ったら、思いのほか英国の森の方が面白くて、ザ・フーのロジャー・ダルトリーからアージェント方面へ行ってしまいました。ジェネシスのメンバーのソロ活動も垣間見て、フィル・コリンズの全面参加したロッド・アージェントのソロも経由しつつ、コチラのソロにはマイク+ザ・メカニクスのドラマーがいたり、まあいろいろな繋がりが見えてきます。
そして、最後にロッド・アージェントがセッション参加した音源をひとつご紹介しますが、ザ・フーの1978年のアルバム「フー・アー・ユー」のタイトル・チューンのあの印象的なピアノを弾いているのがロッド・アージェントなんですね。他にも2~3曲でシンセを弾いているようですが、クレジットは完全ではないらしく、最近のインタビューで、他の曲も自分が弾いているということを語っておりました。まあ、レオ・セイヤ―曲集的なロジャー・ダルトリーのソロ1作目も「…やるなぁ」な一枚ですが、かなり強引に作ったという証言がいろいろ出てくるザ・フーの「フー・アー・ユー」も、いろいろ助けられて作られているのさ、というあたりでいかがでしょう。…ちゃんとクレジットしろよなぁ…。大物ほどこういう部分はちゃんとしておくべきだと思うのは私だけでしょうか。
まあザ・フーのキース・ムーンが亡くなったあと、ケニー・ジョーンズにこだわったのはピート・タウンゼント一人だったということですが、こんなに長くやっている大物すら絡んでくる英国ロックの深い森の魅力は尽きません。