7インチ盤専門店雑記426「Justin Townes Earle」
年末にLonesome Cowboyさんの新譜レビューを読んでいて、スティーヴ・アールという懐かしい名前に遭遇しました。文字通りのアウトロー、挫折も復活も経験したカントリー寄りのロッカーがおりまして、80年代後半に一度売れ、薬物だの逮捕だのとバタバタし、90年代後半以降はまあまあ順調に活動しておりました。デビューが遅かったので、結構な年齢です。2020年に久々彼の名前を目にしたのは、息子のジャスティン・タウンズ・アールが亡くなったという記事の中でのことでした。スティーヴ・アールの音楽は本来なら好きそうなあたりなのですが、どうにも感覚的に好きになれなかったので、正直なところ、あまりしっかり聴き込んではおりません。
ところが、彼の息子、敬愛するタウンズ・ヴァン・ザントからミドルネームを頂戴したジャスティン・タウンズ・アールに関しては、どういうわけかハマりましてね。タウンズ・ヴァン・ザント関連で彼のことを知ったもので、親父さんのことは置いといて、素直に聴くことができました。
彼は親譲りの悪童で、早くに学校をドロップアウトし、親父のツアーを手伝ったりしながら、自分の音楽を突き詰めていきました。親爺はとうに家を出てしまっていたので、血なんですかね…。結局彼も逮捕だ、薬物だといった話題がつきまとい、2020年の夏にオーヴァードーズで親爺さんよりも先にあの世に旅立ってしまいました。享年38歳、…まったくねぇ。
でも、このワルがどういうわけか感覚的に好きでしてね。彼がやる音楽も何だかしっくりくるんです。ブルージーな曲をアコギ一本でリズミカルに弾きながら歌うスタイルも好きでした。家族との関係性を歌うにしても、疲れて寝ているママへの愚痴だったり、しょうもないけどユーモラスな内容が多い歌詞もついつい聴き入ってしまいます。
ただ、日本での知名度は絶望的なほど皆無でして、アメリカーナやカントリーが好きという方に彼の名前を出しても、反応をいただけたことすらありません。だからジンジャーの開店当初は時どき店でも流していたりしたのですが、今は自宅に持ち帰り、封印してしまったような状態でした。2017年の「Kids In The Street」と2019年の「The Saint Of Lost Causes」は未聴です。HMVではアナログ盤が入手可能ですから、気が向けばそのうちと考えていたところ、死なれてしまいました。「こんな奴でも望みはあるものだ、人生捨てたものじゃない」的な歌詞世界も好きだったんですけどね。死んじまったらあかんやん…。今、彼の音楽を聴くと、何とも救いようのない辛さが伴うので、1曲も最後まで聴けません。…手元にあるレコードだけでも紹介しておきます。
実は、親父のスティーヴ・アールが息子のトリビュート・アルバム的なものをリリースしたようなのですが、とても聴く気になりません。…そのうち、聴ける日がくるでしょうか。
「Harlem River Blues」はヤツのイチバン好きな曲です。せっかくですから音源を貼っておきます。
2011年のシングル「Move Over Mama」のシングルはRSDでリリースされました。結果的に彼のピーク期ということなんでしょうか。
2018年の「シャンペン・カローラ」も好きでしたねぇ…。こうして見ると、「Single Mothers」「Absent Fathers」「Kids In The Street」の3作はコンセプチュアルですね。…というか、まんま自分自身ですね。やっぱり、ちょいと哀し過ぎますね。