7インチ盤専門店雑記122「サム・ガイズ」
ロバート・パーマーです。伊達おやじです。このひとが一筋縄でいかないのは、歌が上手いとかそういったレベルの話ではないと思います。もっともっとディープなところで評価しないと訳が分からなくなるレコードを作るからです。特にこの曲なんて「なんやねん、このリズム…」と言いたくなるショボい音でエラく格好良いからなんですが、フツーに格好良い演奏をバックにつけてライヴとかやりたくならないんですかね?「なんか違う」と思わせておいて、「あれぇ、やっぱりコレでいいのか」と混乱させて楽しんでませんかね?全然よくないんはずなんですけどね…。コンピュータ・リズムでエラいグルーヴ出して見せたり、リミックス音源になって初めて分かる格好良いフレーズが仕込まれていたり…。やってくれます。
同じ曲を歌ってもロッド・スチュワートはわかり易い格好良さですよね。ロッドさんはあまり曲を作る人ではないので、いい曲を見つけてくる能力というか、鼻が利くんでしょう。でも、この曲に関しては先を越されてしまったわけで、しかも相手が悪かったですね。なんだか聴き比べると、ロッドがただの歌が上手いおっさんになってしまいます。
それにしても、ロバート・パーマーの感性は自分の理解をかなり超えた領域にあるようで、どうしてここでこの音を使うかという疑問を抱きながら聴くことが多いわけです。パワー・ステーションのときは、それが反対方向に飛び出していて、それがかえってよかったのかも知れません。この人の声にエッジの立ったギターが合うとは普通考えないと思うんですけどねぇ。まあ1979年の「Secrets」なんてアルバムは、パワー・ステーションの伏線のようなギターがいっぱい聴けるアルバムですけどね。…本当に面白い人です。
ちなみにこの曲、1973年のパースエイダーズという連中のカヴァーですが、作者はJeff Fortgangという人物です。ところがロバート・パーマーの盤でもロッド・スチュワートの盤でも、クレジットが「Fortang」とミスっているんです。会社も違うのにミスを踏襲するというのは、ちょいと恥ずかしいなと思うんですけどね。まあ80年代の7インチ盤なんてそんな扱いだったのかもしれません。ちょいと悲しくなってしまいます。