7インチ盤専門店雑記835「ロン・ウッドのリスペクト」
世の中には結構な数のライヴ盤があります。ライヴ盤はラジオ番組でも3回に分けて特集しましたが、非常に好きなんです。空間を共有するライヴそのものももちろん好きですが、パッケージ・メディアとなったライヴ盤というものが好きなんです。どうあっても観れないアーティストというものもありまして、わざわざ海外まで出かけて行って観るかというと、やはりライヴ盤で疑似体験する道を選ぶ方が圧倒的に多いわけです。
ライヴはチケットの数に限りがありますからね。人気アーティスト/有名アーティストのライヴをスタジアムやドームで豆粒程度にしか見えない距離で楽しむのもありですが、直ぐ傍で演奏しているような疑似体験も場合によってはありでしょう。…そして値上がりしてしまって、もうライヴを観る気力は失せました。またスタジオで試行錯誤しながら完成させたテイクと違って、一発勝負をかけるような緊張感も好きでしたね。
さて、ヘッダー写真はロン・ウッドの2021年にリリースされたジミー・リード・トリビュートのライヴ盤です。彼はローリング・ストーンズの音源を別にしても、結構ライヴ盤がある人で、上手いとか下手とか言う話とは全然別の次元で、ライヴが好きなのかなと思うわけです。そういう目で見ると、ライヴ音源の多いアーティストとそうでない人という分類が意外にしっかりできるもので、ロン・ウッドはステージでの演奏を楽しむタイプなんだなということがよく分かります。そして、この盤でもノリノリで楽しそうにやっております。ミック・テイラーやボビー・ウォーマックやポール・ウェラーやら、豪華ゲストも気になります。
また2019年リリースのチャック・ベリー・トリビュートのライヴ盤もあります。こちらはイメルダ・メイをフィーチャー曲もあったりして、ジミー・リード・トリビュートよりも、もう少しパーソナルな印象を持つ盤です。ライヴ盤って意外なほど会場の大きさが分かるものですよね。そう言う感覚で聴く要素も好きなんです。
我々の世代やもう少し上だと、ライヴの最後にチャック・ベリーのヒット曲を演奏するのが常でしたが、今更どうしてチャック・ベリー…という気もする企画だったのですが、2017年3月に90歳で亡くなりましたから、時期的にはありだったのでしょうか。亡くなってからの場合、ご本人は知りようもないのですが、ロン・ウッドのような実績も知名度もあるようなアーティストがトリビュート・ライヴをやるというのは、凄いリスペクトの表現だとは思います。
コロナ禍が大きく世の中を変えてしまったということはご同意いただけると思いますが、ミュージック・ビジネスも大きく様変わりしたわけで、レコードを何枚売ってどのくらいの実収入になるかといった時代ではなくなりましたからね。興行としてのライヴというものが持つ意味も大きく変わってしまいました。こういった、個人の趣味嗜好や思いが中心にあるライヴというのは、今後減っていくか、無くなってしまうのでしょうか。ノーギャラやローギャラで参加してくれる有名アーティストの共感が得られれば可能でしょうか。…結構難しい気もします。