7インチ盤専門店雑記606「ボビー・ジェントリー」
音楽史上最初に売れた女性シンガー・ソングライターはボビー・ジェントリーということになるそうです。「売れた」という部分をビルボードの100位以内とかいった程度の緩さにすれば、他にもいらっしゃいますかねぇ?ジャッキー・デシャノンはもっと早い気もしますけどねぇ。キャロル・キングなんかは、作曲活動は50年代からですし、売れ出すまで全く歌ってなかったわけではありませんからねぇ。…曖昧ですね。
でも私個人は別に異論はございません。1967年7月にリリースされたセカンド・シングル「ビリー・ジョーの唄」がいきなりNo.1になってしまいます。年間チャートでも3位ですから、文句なしの大ヒットです。
ヘッダー写真は出身地への郷愁を歌った1967年リリースの4th「想い出のミシシッピー」の7インチ盤ですが、B面が大ヒット「ビリー・ジョーの唄」ですから、豪華カップリングの再発盤というヤツでしょうか。豪華と言っても、「想い出のミシシッピー」は売れてませんけどね。でもこの曲、好きでしてね。ビリー・ジョーよりこちらの方が惹かれるなぁ…。
この方、美人シンガーとしても有名なほどで、ダスティ・スプリングフィールドと双璧と言われることもある美人さんです。面白いのが78〜79年頃、3番目のダンナさんがカントリー・シンガーのジム・スタフォードなんです。「My Girl Bill」という曲が好きで、個人的に忘れられない人です。マルチに楽器をこなし、コメディアンでもあります。ミズーリの田舎ですが、自分のシアターを持っていて、長年そこで演奏なりを披露し続けておりました。ツアーに明け暮れるミュージシャンが多い中、手堅い人物だったんでしょうか。
でもボビー・ジェントリーとの結婚生活は2年ほどで終わります。しかもボビー・ジェントリーはその後マスコミ露出ゼロで行方が分からないほどなんです。ショービズに嫌気が差したという人はたまにいらっしゃいますが、何だか徹底しております。
もともと大ヒットした「ビリー・ジョーの唄」の歌詞は投身自殺の描写で孤独や無関心という人間の深い心理を扱ったもので、暗〜い曲です。むしろヒットしたことが驚きと言ってもいい曲でしょう。彼女はセルフ・プロデュースも含めスタジオ内のエンジニア的な部分もマルチにこなしたそうですが、クレジットされたのはラスト・アルバムのみなんだとか。そういった女性の差別的な扱われ方を訴えたりもした人なんですね。
合わせて貧しかった少女時代のことを歌った曲の歌詞は暗喩まみれで、簡単には理解できないものです。UCLAで哲学を専攻していたとかいいますから、深い考えに基づいて音楽活動もされていたのでしょう。諸々の記述を見る限り、女性が美しいということで受ける偏見というものも確実にありそうですね。なかなか難しい話のようですが、ジェンダー関連の感覚が随分変わってきた現代だったら、また違った活動もできたでしょうが、シーンに登場するのが早すぎた人なのかもしれません。
日本国内ではリアルタイムでどの程度の知名度があったのやら…。7インチ盤がもっと出回っていてもおかしくないと思いますが、ぜんぜん見かけません。英語圏以外では、この手のアーティストは売るのが難しいのでしょうか。
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