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7インチ盤専門店雑記659「Slide On This」

ロン・ウッドの「Slide On This」です。1992年9月8日リリースのブルース・ロック・アルバムです。デルタ・ブルースなどにズブズブにハマった後、ブルースが去ってしばらくしてこのアルバムを聴いて、正気を取り戻したようなところもあります。一方でブルーノートを中心とした1950年代60年代のジャズにハマっていた頃でもあったのですが、ジャズに行きっ放しにならないで済んだのは、やはりこの辺のアルバムのおかげかもという感覚もあります。

ローリング・ストーンズの「スティール・ホイールズ」が1989年の夏に出て、91年の春ごろに「フラッシュポイント」というライヴ盤が出たんです。個人的には世間で騒ぐほど楽しめなかったんです。洋楽のヒットチャートはR&B系が席巻しており、全然楽しめなくなっておりました。如何せん1970年代初頭から、自分の洋楽志向の中心にビルボードのHot100があったわけで、この時期までは何気にフォローしていたのですが、ここで力尽きたんです。むしろ邦楽も同じ土俵に上がっているJ-WaveのTokio Hot100の方が面白くなってしまったんですけどね。

1991年の秋ごろは前職で姉妹都市に派遣になって、バンクーバー郊外のサレーという町に滞在していたり、クリスマス・シーズンには英会話の先生ですっかり友だちになってしまったリック・オヴァトン(パイオニア・カロッツェリアのCMなどをやっていたNew York Unitのあのトランぺッターです)の結婚式に出席するためにニュー・ヨーク(正確にはロング・アイランド)に滞在していたり、自分の人生の中でも最も忙しく飛び回っていた時期でした。グランジは直ぐには全然好きになれず、アンプラグドもあまり好きになれず、一方でジャズも聴き始め、その他はJ-Waveで済ませてという、ロック中心の洋楽から最も遠ざかっていた時期なんです。

ただ、カナダで入手してきたレッド・ツェッペリンのリマスター・ボックスが意外なほどいい音で鳴ることが知れ、ブラック・クロウズやらレニー・クラヴィッツやら他にもいろいろ楽しめるロックがまだまだあることも分かって、揺り戻しが来たような時期にロン・ウッドの「Slide On This」がリリースされましてね。…やっぱりいいじゃねーか、といったところでした。

何だか捻くれまくったフレーズを繰り出してくる「Testify」がエラく格好よくて、「Show Me」がシングルというのにあまり納得ができず、他にもいい曲があるのではという耳で聴いておりました。92年は2月にガンズ・アンド・ローゼスのライヴを観て一層ロック回帰が進み、秋ごろに観たELPがなかなかよく、さらにジェフ・ポーカロの追悼公演のような趣きだったTOTOの武道館ライヴが凄くよくて、完全にロックにカムバックしたような時期とも言えそうです。

ポール・ロジャースの「マディ・ウォーター・ブルース」がもの凄いクオリティで、ブルース・ロックというものが自分の中心にあるべき音楽かという感触を持っていたところに出た「Slide On This」は、めちゃくちゃ聴いたというほどでもないのですが、自分の方向性やら、もう少し大きく言うなら「生き方」みたいな部分に少しだけ影響を与えているようなんです。翌年リリースされた「Slide On Live」と相俟って、…頑張っていた頃の自分を思い出させるのか、今でも聴くと少し背筋が伸びるようなところがありましてね…いいんだな、その感触が。

年寄りの昔話になってしまいましたが、90年代も音楽を聴き続ける源動力になった盤でした。…ここ数日、体調がイマイチで、そろそろ振り返り記事も書かないとと思い立ったところです。

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