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7インチ盤専門店雑記844「アンダー・マイ・サム」
1966年リリースのアルバム「アフターマス」に収録されていた曲ですが、英米ではシングル・カットされておりません。日本独自リリースの有名な一枚です。1968年になってからリリースされ、しかもB面は1964年春にリリースされたファースト・アルバム収録曲「恋をしようよ I Just Want To Make Love To You」です。結構強引な印象です。
何故こういうシングル・リリースがあったかというと、やはりザ・タイガースがカヴァーしたからだとは思います。朝妻一郎氏によるライナーノーツでも書かれていますが、グループサウンズのアーティストがステージで好んで取り上げているとのことで、他には英国ではウエイン・ギブソンが、米国ではデル・シャノンがカヴァーしていることまで紹介しております。
アルバム・リリースとは時期が違うことは、やはりスリーヴに掲載されている「只今のヒット曲 〈ベスト・セラーのご紹介〉」が参考になります。この盤の場合、プロコル・ハルムの「青い影」、セルジオ・メンデス~の「マシュ・ケ・ナダ」、ウィッシュフル・シンキングの「ピーナッツ」などが目を引きます。1968年頃の370円定価盤、やはり状態がよろしければお宝盤です。
何度でも書きますが、ビートルズやローリング・ストーンズは世界中にコレクターがおりまして、ウチのようなお店にも、海外から、お食事がてらいらっしゃいます。そして、7インチの売りボックスをざっと見て顔色が変わったりするわけです。あるはずのない曲の7インチ盤がありますからね。ウチの売りボックスは大まかに英国/米国/日本に分けてありまして、ヨーロッパ各国は英国側に、その他の国は米国側に入れてあります。海外のお客さんの場合、大抵英国側をご覧になって終わりです。米国側には興味がないのか何なのか…。米国人なら当然かもしれませんが、ウチの場合、ヨーロッパ各国と台湾の方が多いわけで、そうとも言い切れないわけです。…まあ、ビートルズとローリング・ストーンズは不滅の人気といった印象です。
マリンバの音が印象的な、普通のロックとはかけ離れた曲ですが、ミック・ジャガーのヴォーカルのせいでしょう、紛れもなくローリング・ストーンズのサウンドだと思えてしまうところが面白いです。ギターは遠慮気味に緩~く弾いております。こういう曲を聴くと、1960年代のローリング・ストーンズがいかに多彩だったかを思い知らされますが、こういう多彩さはブライアン・ジョーンズの為せる業だったりします。今更ながら、やはりもう少し評価してあげたい気もします。
B面の「恋をしようよ」はウィリー・ディクスン作のブルース・ナンバーですが、マディ・ウォーターズのヒットが有名です。ローリング・ストーンズのバンド名もマディ・ウォーターズの楽曲に由来しているわけですし、初期のブルース・カヴァー・バンド然とした演奏が懐かしく思えます。実は1966年頃には既にかなり多彩な楽曲を聴かせていたとなると、やはりモンスターの孵化を目撃したようで面白いですね。