7インチ盤専門店雑記478「Take This Hammer」
マーク・ノップラー率いるザ・ノッティング・ヒルビリーズの「missing…presumed having a good time」というアルバムがあります。1990年リリースですから、アナログはそれなりにレアかと思います。この時期の渋い音源も含め、マーク・ノップラーのソロはダイア―・ストレイツ時代よりも好きなほどです。note内を「ノッティング・ヒルビリーズ」で検索しても、過去の自分の文章しか出てきませんから、あまり人気はないようです。その以前の文章では、英国発だからこそここまで渋いカントリー・ロックができるとまで書いております。確かにカントリー・ミュージックの世界がド派手な様相を呈していた時代です。
この盤の冒頭に「Railroad Worksong」という曲が収録されております。これは全マーク・ノップラー関連音源でイチバン好きと断言できるものです。作者は「Trad. Arr. The Notting Hillbillies」とだけ記されております。何度かこの曲名で検索したのですが、上手く情報がヒットせず、オリジナル音源のようなものはないか気にはなっておりました。如何せん「どこかで聴いた曲なんだけどな…」ということが、頭の中に常駐して30年以上経っておりますから、気持ちが悪いんです。
先週某常連さんから「ニッティ・グリッティもカヴァーしている」という有り難い情報がもたらされまして、再度検索したところ、今回は何とか源流に辿り着けました。さっさと気がつくべきだったのですが、曲名を変えているんです。Googleの検索結果の下の方に「Take This Hammer」という項目が表示されていることに留意すべきでした。
Wikipediaの概要部分に以下のような記述があります。
囚人が歌った労働歌ということは内容から判りますが、他にも「Nine Pound Hammer」「Swannanoa Tunnel」「Asheville Junction」といった曲名でも似たような歌詞で歌われたわけですね。そして「Railroad Worksong」と…。トラッド・ソングにはよくあることですね。ある程度研究され尽くしているようで、この曲の各種ヴァージョンが大量に表示されます。自分の情報収集能力の低さに恥じ入ります。
そして、自分の記憶の中にある元歌的に知っていたのがレッドベリーだということに辿り着けました。この凶暴なブルースマンについては何度もあちこちで書いておりますから、異名同曲だということに気がついてなかったということになります。この機会にYouTubeでいろいろ聴いてみまして、結局反省することになるのですが、トラディショナル・カントリーとブルースは根っこで繋がっていることがままあるわけで、ついつい先入観を持ってしまい、カントリー・シンガーの情報ばかりあたっておりました。いかんですね。
そしてYouTubeで検索すると、何と「サン・フランシスコ・ベイ・ブルース」で有名なジェシー・フラーのヴァージョンも出てきます。このワンマン・バンド・スタイルでプレイするブルースマンも気になる存在ではあります。日本ではどこまでの知名度が得られているのやら。多くのブルースメンの音源が再発される昨今、いまだに名前を目にすることが少ないように思います。
そして、とても意外な名前が出てきました。何とビートルズです。「ゲット・バック・セッション」の中でやっているんですね。ただこれはジャム・セッションに毛が生えたようなテイクですから、さもありなんという気もします。しかし、ビートルズ関連ではジョン・レノンの一部の音源を除いて、ブルース・テイストをあえて排除したような連中ですから、意外は意外です。
そして、もう一つ、意外な名前が出てきました。スペンサー・デイヴィス・グループです。あの天才少年スティーヴ・ウィンウッド君がメジャー・デビューしてきたバンドです。こちらはセカンド・アルバムに収録されているので、キッチリやっている演奏が聴かれます。やはり米国の白人さんよりも、英国人の方がストレートにブルースへのリスペクトを表現しておりますね。この曲も「ミッドナイト・スペシャル」などと同様の位置づけと考えてよさそうですね。
それから、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドのテイクも、今聴くと納得してしまうのですが、よく聴いたアルバム「永遠の絆 Will The Circle Be Unbroken」に収録されていました。…トラッド・ソングの辞典みたいなアルバムでしたね。ただし曲名は「Nine Pound Hammer」となっておりまして…、聴いたことあるわけですよ。全然繋がっておりませんでした。
ただ、ここまでいろいろ聴き比べてみて、やはりノッティング・ヒルビリーズのテイクはいいなと思うわけです。渋いです。このアレンジが出てくるところがマーク・ノップラーの素晴らしいところでしょうかね。
この曲の聴き比べ、もうキリがないんです。もの凄い数のアーティストがやっています。まだまだいっぱい聴いてみたのですが、その中でHarry Manxというカナダ人のヴォーカルがちょいと沁みるんです。こんど時間があるときに、このアーティストもしっかりディグしてみたくなりました。
この人、「Voodoo Child」とか「Good Times Charlie~」とかも出てきます。選曲だけでもそそられますし、演奏もかなり個性的です。嗚呼、エンドレス!!