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続・下町音楽夜話 0300「不思議な押し入れ」

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

さあ「続」になって300本目、トータル966本目である。ま、通過点だ。当初の目標までは、あと34本。今年の秋口には到達予定である。騒乱の2020年が終わり、2021年は少しでもよい年になればと思うが、新型コロナの感染拡大が封じ込められるのはいつ頃になるのだろうか?そもそも非力な人間がウィルス禍を克服するなどということは無理という気もするが、せめてウィズ・コロナでも通常の生活レベルまでは戻したいものだ。店は休みの間も随分アルコール除菌しまくったが、終わりが見えない作業に疲れが増すばかりで、鬱々とした気分のまま終わろうとしている正月休みが実に虚しい。気晴らしのように7インチ盤の整理などをしているが、気が晴れるわけはない。

それでも少しは面白いものがないかと自宅の不思議な押し入れをガサゴソやってみた。いまだに、30年前に購入したまま、店の袋ごとしまい込んであるレコードが出てきたりする、まるでタイムマシンのような押し入れがあるのだ。押し入れの手前にいろいろ物があって探しにくいというだけなのだが、7インチ盤専門店を始める頃は随分楽しめた。その後も覗いてみるたび新たな発見があるので、大がかりな整理などせずに放置してあるのだ。先日古いVHSのテープを探してゴソゴソやったときに出てきた段ボールが、実はレーザーディスクが詰まっておりガッカリしたのだが、それでもDVD化されていないような貴重な映像がいろいろありそうで、なんとかダビングできないかと思うが、そんな時間もない。どうしたものか。

そんな中、押し入れから7インチ盤が少し出てきた。マムフォード&サンズが2枚含まれているので、さほど古いものではない。それでもウェブで価格チェックしてみたところ、主だったサイトはどこも売り切れており、少しは価値がありそうだ。ものは「The Cave」と「Little Lion Man」、2009年の限定盤7インチである。アナログ・ブームが再燃する直前であり、しかもアナログに馴染みのよい音を持ったバンドである。パッと見、経年劣化したように見えるが、そういった古きよき時代のものを模したデザインであり、新品未開封のものである。

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こういった盤は売り出せばいいだけだが、開封してジャケットをスキャンするかどうか悩ましい。いずれにせよ、ミント・コンディションである。しかも「The Cave」の裏面は「Untitled」となっている。アルバム未収録曲か?出てきたときは「ビートルズ以来ベスト10に同時に4曲を送り込んだバンド」として騒がれたものだ。レトロなデザインが何とも愛おしいが、どうしたものか?…これ、ひょっとして、店を始める頃も判断がつかず、押し入れに放り込んだような気がする。もうしばらく寝かせておくか…。これだからこの押し入れはいつまでも「不思議な押し入れ」なんだな。…要は物忘れが酷い年寄りの遺失物ということか。

他にはアンクル・テュペロの7インチ盤Boxも出てきた。2012年のレコード・ストア・デイのアイテムだが、これもそれなりに価値がありそうだ。ウィルコとサン・ヴォルトの源流となるオルタナ・カントリーのバンドだけに、今でも人気はある。ウィルコの一時期の大ブームは落ち着いてしまったが、ジェフ・トゥイーディはクオリティの高いソロ・アルバムをコンスタンスに出してくるので、今でも十分に人気はあると言えよう。さて、これもどうしたものか。もうしばらく寝かしておくか。どうせ自分がポックリ逝ったときにどこぞの中古盤屋が喜んで引き取っていくのかも知れないが、押し入れにお宝が少しは眠っていてもいいだろう。

さて、他には数枚のスリーヴレスの輸入盤7インチも出てきた。店を始めるにあたり、スリーヴ付きに拘っているというスタンスを打ち出したので、当初販売ボックスから外された盤である。それでもそれなりに好きな曲だったりするので、扱いに迷ったか、寝かされているわけだ。極一部の人気があるスリーヴレスは売っているし、売れてしまうが、これらもそろそろ出すか。

ものはMott The Hoople「All The Young Dudes」、Danny O’Keefe「Good Times Charlie’s Got The Blues」、Sweet「Ballroom Blitz」、Led Zeppelin「Whole Lotta Love」などのそれなりに人気のある曲である。裏面が別のアーティストだったりするRock’n ManiaやOldies Seriesなどのシリーズはどのみち大した値は付けられない。SweetやLed Zeppelinはいまだに人気はある。これはそれなりに価値があるのだ。特に「Ballroom Blitz」は大ヒットしているのに、英国盤と日本盤のアルバムには収録されていないので、欲しい人は欲しいのである。

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The Korgis「Everybody’s Got To Learn Sometime」もあるが、これは売れない。手元にスリーヴ付きの輸入盤も持っているのだが、こちらはレーベルが空白で、曲名に引っ掛けて「聞けばわかる」ということになっているのだ。ピクチャー・レーベルなどにありがちな、裏面のレーベルに「other side」などと書いて情報が載っているわけでもない。ところが出てきたのは先行リリース時のスリーヴレス盤なので、さすがにレーベルに文字が入っている。売れたからできるお遊びだが、トークイベントで時々かける曲でもあるし、目新しいものが次々出てきた時代の証言者としてもこれらの盤は手元に置いておきたいのだ。

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さあ今年も音楽三昧の一年になるのだろうか。7インチ盤がかなり売れてしまっているので、仕入れに行きたいのだが、コロナさんよ、少し落ち着いてくれないか。そろそろ商売に影響が出てきそうでいけない。



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