見出し画像

7インチ盤専門店雑記562「ジューン・クリスティのクールネス」

今年も夏が近づいてきて、暑さも本番といった空気になりましたね。そのまえに最近低気圧に弱いということに気がつき、頭痛の季節を乗り切らないといけないわけですが、暑さもムシムシも結局のところ嬉しいものではありません。こんな時期になると、やはり脳内で涼やかなものを求めてしまうのか、毎度のことながら、ジューン・クリスティの「サムシング・クール」が聴きたくなってしまいます。2022年9月に、15年前の文章をアップデートして投稿したものがありまして、昔からこの盤に惹かれていたことを記しているわけですが、…そこでも書いておりますが、理解できていないんですよね、これが。

キャロル・キングの「タペストリー」のプロデューサー、ルー・アドラーが「タペストリー」制作時に参考にしたのが、ジューン・クリスティの「サムシング・クール」だということを公言しておりまして、全然「タペストリー」に似ていないこの盤に興味を持ったわけですが、いまだに何故、何処を参考にしたのさということが全くもって分かりません。でもねぇ、涼やかでいいアルバムなんですよ。

ジャズ・ヴォーカルに全然興味がない段階で聴いたもので、余計なことを考えずにスッと入り込めたからなのか、上手いとかヘタとかでもなく、単純にこの女性の声が好きになりましてね。キャロル・キングも結局のところ、同じなんです。リアルタイムでは11歳から12歳ごろのヒット・アルバムですから、シンガー・ソングライターとしてのキャロル・キングの立ち位置だの予備知識は一切なし、ラジオから流れてくる最新ヒットとして聴いた「イッツ・トゥ・レイト」や「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」に心惹かれ、直ぐにはアルバムが買えたわけではありませんでしたが、あの声が耳の奥底に留まっておりました。しばらくして、ゲートフォールドでもないペラペラの再発盤を購入して、毎晩毎晩、まあ聴きましたよ。どこが好きって、やはり声が好きでしたね。

結局のところ、この2枚に収録されている音楽は全然似てないということは今でも思うことですが、「「サムシング・クール」を参考にした」というルー・アドラーの発言が、今では納得できる気がします。なるほど、佇まいは似たものを感ずるということが、自分の感覚として言えるようになりました。2年前はまだそれすら分かってなかったのかもしれません。そこから15年前の文章を大きく加筆することなく再掲しているわけですから。

確かにこの2枚、似たところがありまして、あまりに自然な声だからか、何のフリクションもなく心の中に沁みてくるんです。普段そんなに多く聴く盤ではないのですが、恐ろしく自然に沁み込んできて、歌えたりするんです。もし、この部分をキャロル・キングの声なら再現できるかもしれないと思ったのなら、ルー・アドラーはやはり素晴らしいプロデューサーなんでしょうね。ミュージシャンの個性でもなく、録音技術でもなく、音楽の佇まいなどといった抽象的な部分で目標設定ができ、そこに近づけるように録音をするなんて、できそうでできない気がします。

自分にとって「タペストリー」は、年中聴ける心が和む音楽だったのですが、今なら初夏に少し体温を下げてくれるチルアウトな一枚としておススメできるようになりました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?