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7インチ盤専門店雑記649「99 Luftballons」

自宅の余剰在庫ボックスから状態のいい7インチ盤を少々店に持ち込みました。やはり人気の80sはよく売れますから、補充も必要です。今現在50代から60代あたりの皆さんは本当に80sがお好きでしょうから、こちらも揃えておきたいとは思います。ただ7インチ・シングルに拘りがある方は当然ながら、ごく一部です。ごく一部の方々がそれでも一生懸命探していたりしますから面白いんですけどね。

NENAの「ロックバルーンは99」あたりも極めて80s色が濃いというか、80s臭が強いというか、他の時代ではあり得ないほどにポップでノリノリですが、これ反戦歌でしたよね。以前、ドイツ語の勉強をしているという高校生くらいのお客様が買っていかれましたが、ちょいとそんな話題を振ったら、えらい真剣な顔で「そうなんです」とだけ返されましてね。ご存知だったようですが、そういったことがキッカケでドイツ語の勉強をする、…というか、あの若さでもうやりたいことが決まっているとか、自分の進むべき道が見えているということに敬意を表したいですね。外務省方面でしょうか、ドイツ文学方面でしょうか、頑張って欲しいですね。

大ヒット直後に来日したとき、まだレパートリーが増やせてなくて、この曲を4回歌ったという有名な噂話がありましたが、本当なんでしょうかね…。この曲に関しては、クルマ・ジャケということもありまして、ラジオ番組で取り上げたこともあります。ネーナさん、何故かクラシカルなプジョーの上に乗っかってますが、どうしてここでフランス車が出てきますかね?フォルクスワーゲンか何かにすりゃいいでしょうに…。サブカル近現代史研究家などと言っている私にとって、サブカルの小ネタで「なんで?」と考えたりするのがなによりも楽しいわけなんですが、この曲なんてもう最も美味しいあたりです。

だって、日米貿易摩擦だ、レーガノミクスだとか言って、アメリカは日本車に100%関税を課していたりしたわけですよ。今の中国車みたいですが、実際にデトロイトの労働者が日本車を叩き壊している映像が流されていた時代なんですよ。私はまだ三菱車に乗っていた時代ですが、ヨーロッパはもっと取り残されているという演出か、それとも金がない若者的演出か、何なんですかね…。音楽的には、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンの時代ですから、ドイツ語のヒット曲はプチ混乱ネタでもあり、なかなかに楽しかったですね。第2外国語がドイツ語だったもので、歌詞は真剣に読みましたよ。

9月のトーク・イベントが80s的なものとですから、少し80sサブカルの資料を見直したりもしているのですが、ホンの40年ほど前のことが、随分遠い昔に感じてもいます。…当然ですね。MTV時代にヴィジュアル重視は当たり前といった空気感にはちょいと苦味すら感じますが、本当に清涼飲料のCMでも健康的なエロス全開で、観ている方が恥ずかしくなったりします。

あらためて凄いポジティヴな時代だったんだなと思うわけですが、これって日本だけの特殊事情なんですかね。西ドイツ代表NENAの立ち位置はなかなかに独特です。…欧米ではもう少し後になりますかね。お色気満載のMV、例えばマドンナやポーラ・アブドゥルあたりは80年代後半に全開状態になりますよね。フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「Relax」みたいに病んだ感じのものが先に来て、それが原因しているのかどうかよく分かりませんが、まあ日本は健康的で明るかったなといったあたりです。


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