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7インチ盤専門店雑記863「Steve Hunter & Dick Wagner」

1974年リリースのエアロスミスの2ndアルバム「飛べ!エアロスミス Get Your Wings」にヤードバーズのカヴァー「Train Kept A Rollin'」が収録されております。この曲のギターを弾いているのが、ジョー・ペリーとブラッド・ウィットフォードではなく、スティーヴ・ハンター(前半)とディック・ワグナー(後半)だという話があります。クレジットが有る無しの話もありますが、人選として正しかったのかと思います。それでもエアロスミスがロック・バンドとして飛躍する足掛かりになった曲であることは確かで、いろいろ考えさせられます。

そもそもこのアルバムに収録されている「Same Old Song And Dance」にはマイケル・ブレッカーとランディ・ブレッカーも参加しているわけで、その後のエアロスミスから考えると、バンドのキャラクターがまだ固まっていなかったような印象も受ける人選です。プロデューサーがジャック・ダグラスだということよりも、エグゼクティヴ・プロデューサーとして、ボブ・エズリンの名前がありますから、ルー・リードやアリス・クーパーあたりで弾いている2人、スティーヴ・ハンターとディック・ワグナーが連れてこられたことはなるほどと思うわけです。はたして、グラム的な要素が初期のエアロスミスにありましたかね…。

もっと面白いのが、ピーター・ガブリエルの1stアルバムです。「Car Album」として知られるジャケットの盤ですね。…4枚目までは全部「Peter Gabriel」というタイトルですからね…。クルマに雨粒のヤツです。実はスティーヴ・ハンターとディック・ワグナーの2人はこのアルバムでも弾いているんですね。…この盤のプロデューサーはボブ・エズリンですからね。その他にはキング・クリムゾンのロバート・フリップやトニー・レヴィンもいますが、この辺は何となく理解も及ぶわけです。トニー・レヴィンはここからロバート・フリップとのご縁ができてキング・クリムゾンで長く弾くことになりますが、やはりヘンな人選ですよね。いくらピーターさんがジェネシスとは違うことがやりたかったにしても…です。

しかもスティーヴ・ハンターは「Solsbury Hill」「Slowburn」「Waiting For The Big One」といった、アルバムの性格を決めるような重要曲で弾いております。ディック・ワグナーの方も「Here Comes The Flood」で弾いてますね。…全然イメージではありませんよねぇ。同じ化粧をしている人間が歌っているにしても、アリス・クーパーとピーター・ガブリエルでは違い過ぎるでしょう…。

とにかくトニー・レヴィンという人は器用に何でもこなすベーシストです。参加している盤の多さも凄いですが、その多様さが異様なレベルです。その原因の一つがここにはあるように思いますが、一方でスティーヴ・ハンターやディック・ワグナーの2人はそこまで多様な盤に参加しているわけではないので、このアルバムでの成果がトニー・レヴィンとは幾分違っていたのでしょうか。あらためて聴き直してみたいものです。

ちなみにスティーブ・ハンターは面白いところではベット・ミドラーの「The Rose」とか、デヴィッド・リー・ロスの「A Little Ain't Enough」とかでも弾いております。ディック・ワグナーの方はキッスやミートローフですかね。まあイケる口です。



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