7インチ盤専門店雑記883「タイト・ロープ」
レオン・ラッセルが1972年にリリースしたサード・アルバム「Carney」からシングル・カットされた「タイト・ロープ Tight Rope」です。…怖いです。私的には12歳の時の曲ですから、「何なんだ、このオジサンは!」でした。雑誌のモノクロ写真でしか見たことがなくて、ずっと後にカラーで初めて見たときの衝撃は結構大きかったように記憶しております。シングルはアルバム・ジャケットの顔部分の大写しですから、なおさら迫力があります。…冗談キツイです。
シングルのB面は、ジョージ・ベンソンがカヴァーしてグラミー賞まで受賞してしまう「マスカレード(当時の表記は”マスカラ―ド”)This Masquerade」です。お得感満載です。何はともあれ、450円定価盤は非常に音がよろしいわけです。500円の価格改定シールが貼られている盤も結構流通しておりますが、刷り直しはしなかったんですかねぇ。見たことがありません。シール対応は在庫盤に貼ったのでしょうから、価値的にさほど落ちるわけではありません。マトリクス的な差異は出ますけどね。
如何せん12歳の時の曲、いきなり子どもに理解できるものではありません。聴き易いポップな曲ではないし、格好良いというアーティストでもないし、そもそもいわゆるロックではない…。「何なんだこれは…」から始まり、それでも気になって、ラジオからカセット・テープに録音したものを繰り返し聴いていたもので、母親までこの曲が好きになってしまい、よく歌っておりましたね…。
結局大好きな曲になりまして、7インチ盤を集め始めた頃に早速入手しました。その後は状態のいいブツを見かけることは滅多になく、ひょっとしてレア盤なのかと思い始め、上等なブツがあればダブっていることを承知で買い集めました。結果として見事な余剰在庫が構築されました。イベント等でも余剰在庫の処分をしましたが、手元には非常に状態の良い盤だけが残っております。実は最初に入手した盤は、マトリクスも「1 1 1 ※」でして、お宝用保管箱に入っております。…72年頃にしては、ほぼほぼ未使用盤、ニアミントというヤツです。
実のところ、サード・アルバムからのシングル・カットですが、日本ではファーストとセカンドは発売されなかったので、とうとう日本でレオン・ラッセルの盤が出ると騒いだわけです。東郷かおる子さんのライナーの書き出しが凄いです。
加えて、このライナーで面白いと思ったのが「高い輸入盤を買わなくても…」と言う部分でして、もうちょっとしたら、輸入盤の方が遥かにお安く買えるものになってしまいますよね。…変動相場制に移行したのは1973年2月ですからね。このレコードが発売された時点は、まだ固定相場制、すなわち1ドル=360円だったわけですよね。7インチ・シングル1枚から随分いろいろな学びが得られます。
「カーニー」はA面が典型的なアメリカーナ、B面がサイケデリアと言われるわけですが、加えて滅茶苦茶個性的なヴォーカルもあって、ローカル・カルチャーを学ぶスタンスが求められます。シンプルなラヴ・ソングなどと比べるべきではないかもしれませんが、この曲、随分考えさせられましたねぇ。