さらまわしネタ帳061 - プロコル・ハルム
今年もアーティストの訃報が続きますね。コロナに罹ってというわけではないのが救いと思わなくもないのですが、残念な気分の日々が続いています。自分が聴き馴染んできたアーティストは、ご高齢の方が多いので仕方がないという気持ちはありますけど、やはり好きなアーティストが亡くなると寂しいものです。2月はイアン・マクドナルドに続いて、プロコル・ハルムのゲイリー・ブルッカ―の訃報も飛び込んできました。
ゲイリー・ブルッカ―は結構好きなアーティストでした。キーボーダーですが、キーボード・プレイが好きというより、ちょいとハスキーな声が好きなんです。ヴォーカリストとしての評価がどれほどかは知りませんが、あの声が好きな方は案外いらっしゃるんじゃないですかね?
とりあえず、プロコル・ハルムの代表曲と言えば「青い影」なんでしょうよ。1960年代の英国ロックを代表すると言っても過言ではない大名曲です。最初の解散後はエリック・クラプトンのバックについたり、アラン・パーソンズ・プロジェクトの曲で歌ったり、いろいろ活躍しましたが、日本では評価されないというか、知名度が悲しいほど低いです。
そもそも、「プロコル・ハルムの曲で「青い影」以外に好きな曲は?」と問われて、答えられる方がどれだけいらっしゃいますかね?「コンキスタドール」「グランド・ホテル」「ソルティ・ドッグ」あたりは出てくるものでしょうか?かくいう私も、プロコル・ハルムのアルバム10枚全部とゲイリー・ブルッカ―のソロ3枚はすべて買いましたし、結構好きな曲もありますが、4曲以外の名前は直ぐに思い出せるわけではありません。…「月の光」もあるか…、といった程度です。「青い影」が売れ過ぎたというか、突出して有名な曲が一つあると、他がかすむんですかね?
このファースト・アルバム、やはり代表作なのでしょうか。マシュー・フィッシャーによるイントロのオルガンは、バッハの「G線上のアリア」の引用ということでいいんでしょうけど、作者としてのクレジットがゲイリー・ブルッカ―と詩人のキース・リードの2人だったんですね。21世紀になって、マシュー・フィッシャーが訴訟を起こし、かなり長期にわたって争われ、高等法院が控訴審をひっくり返すところまで行ってしまったんですけどね。何だか名曲にケチがついてしまったような、残念な気がしてしまいます。
そもそも、詩人がバンドのメンバーとしてクレジットされているというのは珍しいと思うんですけど、後々、キング・クリムゾンとピート・シンフィールドの例も出てきますし、英国人のやることは面白いですな。
デビュー曲の「青い影」とセカンド・シングル「ホンバーグ」は、当初シングル・オンリーでファースト・アルバムには収録されていなかったんですけど、「青い影」はさすがに再発では冒頭に収録されることになります。…入ってないとまずい気はしますね。
結構メンバー・チェンジもあるバンドですが、第1期がシングル1枚のみ、実は「青い影」の録音メンバーからギターとドラムスはたった1曲で脱退しているというわけで、その後のメンバー・チェンジが繰り返されることを暗示してましたかね。ブルージーなギタリスト、ロビン・トロワ―が加わった第2期は3枚目までとなります。ちなみに私は、この時期のセカンド「月の光」とサード「ソルティ・ドッグ」は結構好きなアルバムです。
第3期は、あの「青い影」のイントロを弾いていたマシュー・フィッシャーが脱退してしまいます。クリス・コッピングというオルガン奏者もめちゃくちゃ濃い~感じの人ですが、彼は結局解散まで在籍します。元々は、前身バンドのパラマウンツというのがあって、そこにいた人ですからね。もとに戻ったみたいなものらしいです。
↑ これ、大ヒットしたオーケストラとの共演ライヴ盤なんですけど、時代を感じさせますね。そもそも、この盤のときはギターもベースも脱退してしまっているんですけどね。まあ、キーボーダーが2人もいて、そちらがフロントマンとなると、ギターもベースも面白くないかもしれませんね。このバンドの音、ベースがロック・バンドの中で最も面白くないというか聞こえないんです。そこが日本ではあまり人気がない原因かな?などと思ったりもするんですけどね。ちなみに代表曲「青い影」はやってません。
その後ミック・グラバムというギタリストが意外に頑張りまして、第5期も充実したアルバムを作ります。「グランド・ホテル」はプロコル・ハルムのアルバムの中では最も好きな盤です。クラシックとの融合みたいなことを他のバンドではあり得ないレベルで達成しています。
解散直前10枚目、第6期は、オルガンのクリス・コッピングを何故かベースにコンバートして、ピート・ソリーというシンセも使うキーボーダーをもう一人加入させてしまいます。やめときゃいいのに、という典型ですな。ここでいったん解散です。その後ごたごたしながらも第24期のメンバーで現在も活動中だったんですけど、ゲイリー・ブルッカ―が病に倒れ、帰らぬ人となってしまいましたから、さすがに終わりですかね。
ちなみにゲイリー・ブルッカ―のソロ3枚は結構な名盤です。エリック・クラプトンが参加していたり、いろいろです。ゲイリー・ブルッカ―はビル・ワイマンのリズム・キングスに参加したこともありますし、ジョージ・ハリスンやリンゴ・スターのサポートもやったりします。また2012年にはユーミンとのジョイント・ライヴもやりましたね。ユーミンのドキュメンタリーを観たことがあるんですけど、ゲイリー・ブルッカ―が出てきてビックリしたことがありました。まあ、いろいろやっている人です。
思うんですけど、プログレッシブ・ロックというほどでもないし、ハード・ロックでは決してない。だから日本ではイマイチ評価されていないように思いますけど、普通にポピュラー・ミュージックと考えたときには、結構美メロも豊富ですし、音もアレンジも面白いことをやっていると思うんです。何だか売り方が下手で損しているように思えてならない人たちです。
どうせどこの音楽番組も、ゲイリー・ブルッカ―が亡くなったことに関しては、「青い影」をかけて終わりかなと思いますから、うちの番組くらい、まるまる一時間プロコル・ハルム特集をやってみますかね?
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