7インチ盤専門店雑記834「ローリング・ストーンズの余剰在庫」
ローリング・ストーンズの余剰在庫、…あるわけないでしょ、と言いたいところですが、やはり少しはあります。手元に2枚しかない場合は余剰在庫とは言わないと思いますが、何枚か売れて残り2枚となった「ブラウン・シュガー」や「ダイスをころがせ」などは、余剰在庫感があります。驚くほど動く幻の来日記念盤「ホンキ―・トンク・ウィメン」なども今は3枚ですが、余剰在庫感が強いわけです。…オリジナルが高くて手が出ないからこれを買われるんですかね?幻の来日記念盤4タイトルは、再発ですけど意外に高めですよ。
問題は70年代の大ヒット2曲でして、どちらも余剰在庫ありですねぇ…。「ミス・ユー」は思い切り時代を反映したリズムですから、サブカル近現代史を語る上でも重要曲ではあります。「悲しみのアンジー」も時期が時期ですから、…ミック・テイラーとニッキー・ホプキンスが演奏しておりますから、重要曲ではあります。ところがこの2曲、中古盤市場に出回っている玉数がおそろしく多い気がします。
ロックンローラーが一定の評価を得て、さらなる高みを目指してエンターテナーとして昇華してゆく70年代、賛否両論、世界中のロックンロール好きを巻き込んで独自の世界を構築して行きます。「ミス・ユー」なんてリリース当時、バリバリに違和感がありましたけど、今聴くと紛れもなくストーンズのサウンドなんだもんなぁ…。
「悲しみのアンジー」は2ヴァージョンのオフィシャルMVがあるわけですけど…、やはり先進的なセンスは持っていたのでしょうか。80年代以降の音楽が聴くものから観るものになって行く時代の変化が予測できていたのでしょうか。
とにかく、70年代のストーンズの7インチ・シングルは意外なほど玉数が少ないんです。「愚か者の涙」あたりは人気曲のわりにレアですから、仕入れても仕入れても、直ぐに売れて行ってしまいます。7インチ盤専門店オープン当初は余剰在庫もあったのですが、いつの間にか入手困難盤になりましたね。2018年頃まではユニオン辺りでフツーのお値段で手に入ったんですけどねぇ…。オークションはもう高くて手が出ません。
「ハートブレイカー」は音圧高めで聴きたいと思いませんか?この辺の盤、マトリクス違いでさほど音の変化はありません。それでもLPで聴くのとはだいぶ違うようで、お店で試聴していても、お客様から「何コレ、何コレ、凄い音ですね」などと言われたりします。7インチ盤向きの録音というものが確かにあるんです。
個人的な好みでは「イッツ・オンリー・ロックンロール」は7インチ盤でなくてもいいかなと思っています。その一方で、7インチでは聴けない「フィンガープリント・ファイル」などは7インチ盤で聴いてみたいなぁと思う代表的な曲だったりします。概ね録音は良好なローリング・ストーンズの中でも向き不向きは当然あります。…感覚的なものですけどねぇ…。
まあそういう意味では、60sのストーンズって7インチ盤との相性がもの凄く良いという気がします。低音をしっかり出したいとか、音圧高めで聴きたいとかいうものでもないのですが、7インチ・シングルが主流だった時代の音であることは確かですし、佇まいがシングル向きという、おそろしく感覚的な話ですけどね。今後少し取り上げてみますかね…。