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7インチ盤専門店雑記830「ビハインド・ザ・マスク」

昨日ランチにいらっしゃった常連さんのK氏が「チケットが取れた」とおっしゃってましたけど、エリック・クラプトンがまた来日するそうですね。2025年4月の時点で自分が生きている自信がないので私は行きません。如何せん50年前、1975年の来日公演が自分にとって最初のライヴ体験だったもので、行っておけば感慨深いものではあるでしょう。でも、こちらにそれだけの体力がもうありません。…ミュージシャンって元気ですよねぇ。

ヘッダー写真は、クリス・モスデル作詞、坂本龍一作曲の「ビハインド・ザ・マスク」です。最初にこの曲に目を付けたのはマイケル・ジャクソンだったものの、アルバム収録には至らず、キーボーダーのグレッグ・フィリンゲインズが持ち出してエリック・クラプトンに聴かせて、こちらはシングル・リリースにまで至ったもので問題になってしまった、という曰くつきの曲ですね。まあ細野さんですら、この曲のポテンシャルを見過ごしていたと言っているほどで、マイケル・ジャクソンやエリック・クラプトンが取り上げるほどの曲だったかと後々騒がれたわけですね。

エリック・クラプトンは1986年のアルバム「オーガスト」に収録します。随分ポップなアルバムですから、この曲も全く違和感がありません。しかも、このアルバムから、第1弾シングルとしてカットされます。たしかに時代の音でもありますし、今更にもっと売れてもよかったかもと思わせる名曲です。セカンド・シングルは映画「ハスラー2」に提供された「ザ・ギフト It's In The Way That You Use It」、他に「Tearing Us Apart」と「Holy Mother」もシングル・リリースされます。まあ商売ッ気を出しましたねぇ…。

手元にある7インチ・シングルがホワイト・レーベルの見本盤でして、しっかり発売日まで記されておりますから、有り難い情報ソースです。何が言いたいかというと、日本では「ザ・ギフト」がファースト・シングルで、こちらがセカンド・シングルなんですね。ポール・ニューマンやトム・クルーズが出演している話題作に提供された曲をまずシングル・カットしたかったということですかね。まあ、86年から87年にかけての話です。7インチ・シングルなんてもうレコード屋さんでも見かけなくなっていた時代ですから、ワーナーさんですら無茶苦茶してますな。

そして、レーベルの曲タイトルの下、作者クレジットですが「Mosdell - Sakamoto - Jackson」となっております。何とマイケル・ジャクソンまでクレジットされているんですね、これが。何故ならマイケルが歌詞を少し補っている箇所があるということなんです。…こりゃ、こじれますな。あの大名盤「スリラー」収録予定で録音もされていたということですが、もし収録されていたら何が違ったのでしょうか。たらればは考えても詮無いものですが、それでもこれだけ大物が何人も登場するトリビアは面白いでしょう…。

さてこの盤、見本盤ですから、当然ながら良い音で鳴ります。フィル・コリンズのドラムスも滅茶苦茶クリアに鳴っております。この曲のプロデュースもフィル・コリンズが手掛けております。いかにも80年代のフィル・コリンズの音です。…そんなわけで、80年代的ドンシャリ感のある鳴りではあります。…もう有無を言わさぬ80sサウンドです。

この盤、当時よく聴きましたが、違和感のある1曲目がやはり忘れられませんね。ゲイリー・ブルッカーやヘンリー・スピネッティをフィーチャーした、ちょいと前までエリック・クラプトン・バンドと呼ばれていたメンツで録音した「ザ・ギフト」の方です。この曲はエリック・クラプトンとロビー・ロバートソンの共作なわけで、アルバム中の他の曲とはやはり音質が違いますし、明らかに毛色が違いますね。…まあ、話題に事欠かないアルバムです。

50年、…半世紀、もうその時間の長さに思いを巡らすだけで感慨深いものです。高校1年で初ライヴ…、いきなりのレイラ…、同じ日本武道館…、あの建物も丈夫ですよねぇ…。

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