7インチ盤専門店雑記543「記憶を辿る旅2」
1970年代前半の記憶を辿ると、いろいろ混乱していたことまで思い出します。テンプテーションズが好きだったなぁということは思い出せますが、どの曲がとなるとよく分からなくなっていたりします。「マイ・ガール」はこの時期に既に知っていたのですが、何時ごろのヒット曲かなどといったことを意識するのはもっと後のことですから、「71年か72年頃だったかなぁ」などと漠然と思っているそばから、「いやあ、もっと古い曲だよね~」という自分もおりまして、結局あらためて調べることになったりします。
1964年のヒット曲でした。随分古い曲でしたが、自分の記憶ではこの時期にいっぱい聴いているもので、きっとエアチェックでもしたテープをいっぱい聴いていたのでしょう。実を申しますと、「ジャスト・マイ・イマジネーション」と記憶が連動しているんです。71年のヒット曲なので、同じテープに録音したか何かだと思います。翌年の「パパ・ウォズ・ア・ローリング・ストーン」も同じように連動しておりますが、こちらはちゃんと翌年の初夏頃の曲という情報までインプットされております。季節感とともに記憶に刷り込まれることは意外に多いようです。
テンプテーションズは1975年のヒット「シェイキー・グラウンド」も好きでしたが、この曲は高校受験が終わってせいせいした気分が帯同している面白い一曲です。冬の寒さよりも春の空気感があります。実は春休みに入ってからなのか、人気のない中学校のグラウンドの景色まで思い出しますから、…何かしら原因になることがあったのでしょう。でもそのことが何かは思い出せません。記憶を辿る旅の面白いところかもしれません。
テンプテーションズに関しては、もう一つ忘れられないことがあります。中学3年の年のクリスマス頃は、ローリング・ストーンズの「イッツ・オンリー・ロックンロール」一色だったのですが、そのアルバムで最も好きだった曲が「エイント・トゥ・プラウド・トゥ・ベッグ」でした。これがテンプテーションズのカヴァーだったんです。ラジオで知った情報だと思いますが、カヴァー・ソングというものを意識した極初期の一曲でして、そのことがまた忘れられません。「ローリング・ストーンズでも他人の曲をやるんだ」という驚き、後々カヴァー・ソングも結構多いバンドであることを知った時の驚き、…すべてが曲の記憶となって、パッケージされています。そういった曲の背景などを知ることも面白いと思わせた曲だったりします。
恐らくイベントでは「解説無用ですね、ご存知テンプテーションズの〜をお聴きください」程度のコメントで1〜2曲はかけるかと思われます。その裏にこういった思い出が詰まっているということが、チョットした瞬間にこぼれ出る小ネタとして奥深さが宿ることにもなるわけでして、トークイベントという時間を共有することの楽しさに繋がっていたりもします。
実は昨夜、note繋がりの方々のオフ会的なことをジンジャーでやっていらしたのですが、実際に顔を合わせておしゃべりすることの面白さはまた別物であることを再認識させられました。老後の楽しみとしては度が過ぎる店かもしれませんが、案外楽しめますよ。音楽好き、本好き、歴史・カルチャー好きであれば一度お試しあれ。
そして今日は雑誌の取材を受けておりました。やはり「テイクアウトにはしない、なぜなら時間と空間を共有するこの営業形態が向いているし、そこに拘りたいから」といったことを語ることになります。アフター・コロナと言いつつ、この旧態然としたやり方に拘るために分刻みで行動し、走るように移動しています。一昨日、昨日、今日とランチは激混みが続き、体力の限界を感じざるを得ない日々ではありますが、連日レコードも売れますし、蘊蓄をかたむけつつ、お客さんや記者さんなんかと店のコンセプトを語ったり、これ以上ない楽しい時間を過ごしているわけですよ。…まだしばらくはこの調子ですかね。体力の続く限り…ですか。