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7インチ盤専門店雑記656「American Folk Music」

8月の下旬になると、夏休みの宿題が終わっていないという感覚が残っているのか、何もなくとも焦燥感にまみれてしまいます。増してや会社が7月決算なのでお盆休みは決算資料と格闘しており、全く気が休まりません。この季節、ただでさえ不機嫌面の人間がさらに笑えなくなってしまいます。カフェのオーナーはいつもニコニコなんて無理無理…。

宿題感覚ついでに、この時期はライフワーク的に老後の楽しみとして保管してあるものの、虫干し的作業をしたりもします。以前にも書いたミシシッピー・ジューク・ジョイント・ブルースのCDを聴いてみたり、ヘッダー写真のボックスを開けて腐ってないか確認したりといった他愛もない作業です。

あちらはジューク・ジョイントで実際に聴かれていたブルースを集めたものですが、こちらはAnthology of American Folk Musicということで、スミソニアンの資料性が高い6枚組CDボックスです。…売り物ではありません。それでもついつい気になって価格チェックをしたところ、購入時の3倍程度になっており、ビックリしました。CDや各種ボックスセットは一時期大暴落しておりましたから、意外も意外です。あ、でもこれ今年の5月に出た再発ですね。…売ろうかな。

今の時代、こういった音楽の関連情報もウェブでほとんど見られると思いますが、やはり紙もののブックレットをパラパラ眺めながら聴きたいものです。…そういう部分は思い切り古い体質の人間です。

コレ、元は映像作家/コラージュ絵画作家そしてSPレコード蒐集家としても知られるハリー・スミスという好事家が、1920〜30年代に発売されたSPレコードのコレクションから選りすぐりの84曲を収録したというものです。最初はスミソニアン・フォークウェイズの前身であるフォークウェイズ・レコーズから2LP×3セットという形態で1952年に発売されました。自分が持っているのは、1997年にCD化されたものでしたが、長らく入手困難だったはずです。何はともあれ、貴重な音源の極めつけボックスというヤツです。

こういったものはどんどん進化すべきと思います。古いものに目を向けて、きちんとしたかたちで将来に向け引き継いでいこうとする人間がどれだけいるか、どれだけ頑張るかなんですけどね。アメリカという国は歴史が短い分、自分たちの歴史を大事にするところもあって、1976年の建国200年祭のころに諸々のメディアではこの手の情報が多く取り上げられていたのですが、その後の時代がコンピュータの普及とウェブの発展という産業革命レベルのバタバタで疎かにされてしまったようにも思います。デジタル化という作業が非常に大事なのだということは理解していても、なかなか進まないですよね。紙は酸化しますし、コピーを共有するなどといったことはデジタルの方が圧倒的に有利ですからね。

昔のLP2枚組×3セットのアナログものが欲しいかというと、実はそこはあまり魅力を感じておりません。この手の音源はデジタルでよろしいのではないかと思います。そのデジタル情報が如何に整理され、必要な情報は加えて行きながら、如何に多くのアーカイヴィストが共有できるかでしょう。そして誰もが利用できるようにすることも大事なことだと思います。

さて、決算資料、そろそろ仕上げないとマズイですねぇ…。

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