7インチ盤専門店雑記547「エイミー・ヘルム」
やっぱりいいんですよ、エイミー・ヘルム。ノース・ミシシッピー・オールスターズのルーサー・ディッキンソン関連人脈として辿り着いた人でしたが、まあそういったことは抜きにしても、アメリカーナ好きは聴くべきアルバムです。何とプロデュースはジョー・ヘンリーです。21世紀になってからずっとハマっている2人に共通の関連人脈ということです。まずその前にレヴォン・ヘルムの娘さんということでもスルーはできない人かもしれません。人望厚いお父さんの取り巻きが放っておかないでしょう。
ちなみにヘッダー写真のアルバム「This Too Shall Light」でギターを弾いているのはドイル・ブラムホールIIです。もう好きなアーティストの名前が続々出てくることになります。カラー・ヴァイナルですが、ファースト・プレスのみローズ・カラーということです…が、セカンド以降のプレスがあったのでしょうか?実に入手困難なレコードです。この盤もダメ元で注文しておいたもので、手元にくるまで何カ月も待たされました。
エイミー・ヘルムに関しても、これまでnoteでも何度か書いておりますが、ノース・ミシシッピー・ヒル・カントリー・ブルースについて調べていた途中で書いた記事にも登場しておりましたし、以前やっていたラジオ番組でも一曲かけておりました。若手アーティストを紹介するような活動の一環として2019年にリリースした「ルーサー・ディッキンソン&シスターズ・オブ・ザ・ストロベリー・ムーン」名義の「ソルスティス」というアルバムから、エイミー・ヘルムをフィーチャーした曲「Like A Songbird That Has Fallen」です。
YouTubeなどで曲を聴くことができるのは非常に有り難いのですが、この人に関しては情報が少ないもので、まだいろいろ調べながらといったところですが、やはりこのアルバムは通して聴いておくべきものですね。実に愛おしい佇まいのアルバムでして、毎度A面B面A面B面A面程度は繰り返し聴いてしまいます。
選曲に関しても、頗る面白いというか、興味を惹かれます。スタートがアルバムのタイトル・チューンですが、これはインディ・フォーク・グループ、Hiss Golden Messengerの曲です。続いてプロデューサー、ジョー・ヘンリーの書下ろし「Odetta」、そして前回の記事でもご紹介している「Michigan」はThe Milk Carton Kidsというインディ・フォーク・デュオの曲です。個人的にはこれがこのアルバムのハイライトです。そしてアラン・トゥーサンの「Freedom For The Stallion」までがA面です。実はレーベルにミスがあって、両面に5曲ずつ記されておりますが、A面は4曲、B面に6曲収録されています。
B面トップがロッド・スチュワートの「Mandolin Wind」、いい感じのカヴァーです。エイミー・ヘルムがマンドリンを弾いております。次がブロッサム・ディアリーの「Long Daddy Green」、そして1965年にザ・バンドがまだレヴォン・アンド・ザ・ホークス名義でシングル・リリースした「The Stone I Throw」。この曲の作者はロビー・ロバートソンです。次が自身やジョー・ヘンリーも作者クレジットに加わるオリジナル「Heaven's Holding Me」、地味な小品ですが、何だか沁みるんです。その次の「River Of Love」の作者はJoseph Henry Burnett IIIとクレジットされておりますが、これはT-Bone Burnettのことですね。随分昔の曲です。そして最後がトラッド・ソング「Gloryland」、レヴォン・ヘルムとエイミー・ヘルムによるアレンジということになっております。
もうアルバムを聴くこともさることながら、このクレジットだけでも一週間分の酒の肴になりそうです。やはり辿り着くべくして辿り着いた一枚なのでしょうか。2018年のこのアルバム、超絶おススメです。
何なんですかね、この心がヒリヒリするような感覚は。まだまだ世の中にはいい作品がありますね。