7インチ盤専門店雑記657「涙のイエスタデイ」
先週末に常連さんたちと開催したリクエスト大会の終盤、どなたかのリクエストでブルース・ホーンズビー&ザ・レインジの「マンドリン・レイン」を聴きました。この連中の音源は全てオーディオ・イベントで使えるレベルの高音質録音でして、どうしてこうなったかは知りませんけど、一体何が起きているのやらと思ってしまいます。単に自分の好みの音なのかと思わなくもないのですが、以前にウチのお店で某オーディオ・ショップ主催のイベントがあったときにも鳴らしていましたから、世間一般で認められている高音質盤なんだと思います。
いっとき、ドナルド・フェイゲンの「アイ・ジー・ワイ」の代わりに「ザ・ウェイ・イット・イズ」をレファレンス盤に使っていたこともあります。この連中の7インチ・シングルがいい音で鳴らないオーディオはいけません。「ザ・ウェイ・イット・イズ」のイントロのピアノで空間的な広がりの描出力があっさり判断できます。ジョー・プエルタの軽いベースが何ともリアルな鳴りで入ってくるあたりで、もう嬉しくなってしまいます。この人のベース、無駄に重くなくて好きなんです。ブルース・ホーンズビーのヴォーカルもざらっとしたリアリティで聴くことができます。
イベントの余韻というわけでもないのですが、印象に残った曲は聴き返してみたりします。ブルース・ホーンズビーのシングルも聴いてみたのですが、80年代の何でもかんでもキラキラした時代に、いぶし銀のような輝きで聴かせる彼らの音楽があったことが自分としては嬉しかったものです。ヒューイ・ルイスと仲が良いのも納得できる人格なのですが、1988年リリースのセカンド・アルバム「Scenes From The Southside」には、ヒューイ・ルイスがカヴァーした「ジェイコブズ・ラダー」の作者ヴァージョンが収録されておりまして、これがまたいいんです。シングル・カットされた「ヴァレー・ロード」も大ヒットしましたね。時期も時期ですから、アナログ盤は本当にいい音で鳴ります。
さて、ブルース・ホーンズビーの音源を一通り聴いて、ふと思い出したのが、アンブロージアでした。ベースのジョー・プエルタはアンブロージアのメンバーでしたね。彼らのデビュー曲「涙のイエスタデイ Holdin' On To Yesterday」は大好きな曲でした。これ、ジョー・プエルタとデヴィッド・パックの共作だったんですね。ラジオでかかったのをたまたま聴いて、即座に彼らのファースト・アルバムを購入しました。セカンド・アルバムのピラミッド型の変型ジャケットは有名ですが、ファーストは意外にレア盤だったりします。ヘッダー写真の7インチ・シングルも恐ろしくレアだと思います。
「ビゲスト・パート・オブ・ミー」などのAOR寄りに路線変更した時期は随分売れておりましたが、私は初期のプログレ然とした音の方が好きだったので、もどかしい想いをしました。デヴィッド・パックはソロも売れましたし、アラン・パーソンズ・プロジェクトに合流したり、いかにもなキャリアを展開します。デヴィッド・パックがいない時期に、ブルース・ホーンズビーが短期間アンブロージアのメンバーだったこともあるわけで、この連中は親しいことが窺われますね。現在もジョー・プエルタを中心にして活動は継続中だということです。
そういえば、アンブロージアでは随分ずっしりと重いベース音を聴かせておりますね。そこが好きだったのを思い出しました。1975年のヒットですから、来年には50周年になってしまうんですか…。少し記憶が曖昧になっているようで驚きました。