7インチ盤専門店雑記840「この世界に愛を」
ローリング・ストーンズの「この世界に愛を We Love You」、ニッキー・ホプキンスによる印象的なピアノのリフが格好良い1967年の中ヒットですが、アルバムには未収録です。英国では8位、米国では50位、英国の方で評価が高い曲です。アルバムに入れなかったのは、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが参加しているので、権利関係がややこしくなるからですかね。当初は参加していることを公表せず、噂を流したと言われておりますな。契約違反だのということですが、正式に手続きを踏んでクレジットしてしまった方がよさそうに思うのですが、そうでもないんですかね。まあ、ビートルズの「愛こそはすべて」にミック・ジャガーとキース・リチャーズが参加したことへのお礼らしいですけど。相互交流はビートルズの「ユー・ノウ・マイ・ネーム」にブライアン・ジョーンズが参加しているというのもありますな。
メンバーがドラッグで続けて逮捕されたことで素晴らしいドラッグ・ソングが生まれたわけですが、ファンに支えられて云々ということでこのタイトル・歌詞なんでしょうが、どうも違和感はありますよねぇ…。イントロの鉄の扉が閉まる音は、刑務所で収録してきたということですが、どうでもいいリアリティに拘りますねぇ…。自己への戒めですかね。
何はともあれ、アルバム未収録です。7インチ・シングルに関しては、さほど玉数が多いと思えない曲ですが、個人的にはオーディオ的に楽しめるのではと考える一枚です。昔、AMラジオのチープな音で聴いていた頃は、ピアノが目立ち過ぎて、ストーンズっぽくないなと思いましたが、7インチ盤専門店を始めてからは、印象が変わりました。低音がしっかり出る環境で聴くと、ベースとドラムスが意外なほど格好良いです。如何せんライヴでは一度もやったことがない曲です。オーディオ的に楽しむしかないでしょう。
ちなみにこの曲、坂本龍一がカヴァーしておりまして、彼のアルバムではダントツ1位評価の大好きな「Beauty」に収録されております。この1989年リリースのアルバムのCD、90年代中盤には海外の音楽好きな友人に配ったものです。この曲、アルバムの中でも非常に座りがよいグッド・カヴァーです。
B面は「ダンデライオン(たんぽぽ)」でして、これは米国では14位まで行きます。いわゆる下剋上シングルです。そんな事情を反映しているのか、この国内盤7インチは両A面スタイルのジャケットになっております。個人的には圧倒的に「この世界に愛を」の方が好きなので、この辺の事情は納得がいきません。サマー・オブ・ラヴやフラワー・ムーブメントのテイストがありますかね?何なんですかねぇ…。
時期的なことを考えると、バンドの変節点ですよね。60年代ストーンズに多大な貢献をしたはずのアンドリュー・ルーグ・オールダムによるプロデュースはこのシングルが最後なんですと。…ここからさらに、モンスター級のバンドに化けて行くわけで、ブライアン・ジョーンズがいた時代の音源の中で、この2曲、やはり重要なシングルだと思います。
ちなみに、シングル盤ではA面の終わりにB面のアタマが出てきて、B面の終わりにA面のアタマが出てきます。アルバムとは違う編集が為されておりまして、一応この7インチ盤はお宝盤と考えております。