7インチ盤専門店雑記536「Cheap TrickとThe MoveとELO」
チープ・トリックのシングルに「Baby Talk」があります。チープ・トリックらしい大好きな曲です。1997年リリースの「Cheap Trick」というアルバムのボーナス・トラックとして収録されておりますが、本来はアルバム未収録曲です。微妙な物言いですが、このシングル、実は前年にSUB POPからリリースされておりますから、大手との契約を失ったときのリリースです。
SUB POPはニルヴァーナやサウンドガーデンなどのグランジ系の連中がここからデビューしているインディペンデント・レーベルです。「Singles Club」という月一回所属アーティストのシングルが郵送されてくる通販システムで人気になったということです。…ヴェテランとも言えるチープ・トリックですら、大手との契約を失ったらこういうところからリリースしたりするんですね。…というか、仕切り直しという意味で、むしろワザとそうしたんですかね?興味深いシングルなんですが、如何せんこれがいい曲なんだ。
このシングルのB面がThe Moveのカヴァー「Brontosaurus」です。ここのところ、イベントに向けてELOの情報整理をしていて、The Moveのディスコグラフィを眺めていて、ふと「Brontosaurus」って…アレかとなりまして、一気にいろいろな記憶が芋蔓式に蘇ってきました。チープ・トリックはシンプルなロック・チューンを上手くカヴァーしますね。この辺はリック・ニールセンの才能とでも申しましょうか、まあギターが上手いだけでなく、古い曲とか詳しそうですね。
チープ・トリックは「California Man」という別のThe Moveの曲も70年代のバンド初期にシングル・カットしております。後半にちょいと転調するかのように「Brontosaurus」のリフを挟み込んでおりますが、カヴァーするときに同じアーティストの曲をメドレー的に演奏するのはありがちな手法ですね。でもいい感じです。
さて、当のThe Moveですが、ライヴやラジオ出演時にストリングスをつけるとき「Electric Light Orchestra」と名乗っておりました。最終的にはThe Moveは中心人物ロイ・ウッドとジェフ・リンとドラマーのべブ・ベバンの3人組になってしまいます。そこがELOの起源となるわけですが、結局ロイ・ウッドは直ぐに抜けてしまいます。The Moveでは実はロイ・ウッドの方が中心にいたんですよね。ジェフ・リンはずっとThe Moveで活動していたわけではなく、ロイ・ウッドが抜けた後に加入したアイドル・レースにいた人です。ですからELOの前身はThe Moveと言っても間違いではないのですが、その辺の事情を踏まえていないと結局混乱します。私は思い切り混乱させられて、何年もかけて調べ上げていたもので、最近のWikipediaの記述も曖昧な部分があることにプチイラッとしてしまいます…。
The Moveは1966年から72年までの間に、4枚のスタジオ・アルバムと14枚程度のシングル(…Wikiではそうなっておりますが、もっとありそうです)をリリースします。シングルは9枚が英国でTop20入りを果たしておりますから、結構人気があったということですね。メンバー・チェンジが多く、第1期から第5期までの変遷がWikipediaに載っております。ニッキー・ホプキンスがキーボードを弾いている曲もあったり、後にT.Rexやデヴィッド・ボウイのプロデューサーとして活躍するトニー・ヴィスコンティがゲスト参加していたり、クレジット好きには面白いバンドです。
私の場合、ジェフ・リン名義の「Message From The Country」というコンピレーションCDで、ELO以前の彼の活動を知ることになりました。その中にはThe Moveが演奏する「Do Ya」とかもあって、ELOが一朝一夕で出来上がったバンドではないことが窺われます。ちなみに「Message From The Country」はThe Moveの4枚目のアルバム・タイトルです。…いやはや、面白いですよ、この辺は。
3日後に迫ったイベントですが、プレイリストがまだまだ動いております。…まあ、当日まで悩むというのはいつものことですね。