備忘録的サブカル近現代史考 015:ジェンダー
時々古雑誌の広告を見ているということを書きましたが、どうもそれに関して発信していいものやら、迷っておりました。一つは著作権絡みで、もう一つは感覚の違いが大きいもので、下手な書き方をして炎上されても困るなといったところです。
例えば今の時代にこんな物言いが通用するわけもなく、昔の広告だというのは一目瞭然なのですが、それでもビクターさんにとっては迷惑な情報ということになるのかも知れません。ジェンダー云々はこういう感性の中で育ってきた我々の世代や、もっと上の方々には苦手な話題だと思います。ウーマン・リヴというものが声高に叫ばれていた時代だからこその取り上げ方かも知れませんから、昭和テイストのサブカル・ネタとしてご承知おきください。一方で、著作権がどうのと言われて叱られそうですが、まあ、叱られたら叱られたでそれから削除要請に応じるということにしておきますかね…。ただご迷惑をおかけするつもりは毛頭ございません。
ダイハツさんの広告も随分上から目線で笑えるほどですが、昔のハードボイルド小説なんて、こんなもんじゃないんですけどね。時代とともに男女間の人間関係の在り方も変わっているのでしょうか?実はかなり若いときから、今でいう性同一性障害的な人間が身近におりまして、差別対象とも思っていなかったわけで、LGBTQとか今更言われてもという程度の感覚しかありません。でも昭和のサブカル的なものの中には、明らかにマズイものもありますし、そのことを承知の上でアウトプットは慎重にならざるを得ません。クルマの広告は特に面白いです。とりわけメーカーの個性が際立っていたりします。
トヨタはいい具合ですね。サスガです。懐かしいですね、セリカのこの色…。
ホンダも…。でもこちらは「世界家族のベイシック・カー」と謳うあたり、ファミリー・カーというジャンルをしっかり意識していたのでしょうが、この後、ドエラいスポーツ・カー・ブランドになっていくホンダさんがこう言っているのが楽しくもあります。
いすゞはまるで方向性が違っていて、これはこれでウケますね。いすゞ・ジェミニねぇ…、独特の立ち位置でしたねぇ…。女性に売るということは全く考えていなかったのでしょうか…。
男性誌ですからアピールしている対象は男性なんでしょう。まあクルマもオーディオも、男性的な趣味嗜好でした。音楽の方では、パイオニアもソニーも、ラック・マウントできるようにしてあったり、別売りのオーディオハンドルを装着した写真でヘヴィ・デューティといった印象を演出してますね…。昔、音楽の話題を持ち出していい娘か否かは強く意識していたように思います。
一時期のヒット商品から見える方向性というものも面白いんです。超懐かしいソニーのジャッカルは「ラジオ・カセット・テレビ」という言い方でしたが、ビクターは「ラジオ・テレビ・カセッター」と称し、ラテカセ77という製品もありました。まあ時代は多機能化にまい進し、しかもアウトドアに持ち出す方向性を持っておりました。
持ち出すという方向の話でいくと、オリンパスのパールコーダーはマイクロ・カセットを使って小型化を実現しておりますが、まだまだ小さいと言えるサイズではありません。ナショナルのポケットテレコはこの半分のサイズでした。でも2年後にはソニーのウォークマンが登場するわけで、方向性としては間違っていなかったというか、先行していたのかもしれません。音質面でカセット・テープを採用したウォークマンの方が圧勝だったので、マイクロ・カセット系はヴォイス・レコーダー的な使われ方に限定されていくわけですね。この辺の見極めが勝負の勘どころだったということなのでしょうか。…案外忘れられている部分かと思います。
髙山はファッションに関してはかなり疎い人間ですから、あまり語りたくはないのですが、ジーンズのCMやレナウンのシンプル・ライフなどは忘れられません。アメリカが歌う「シンプル・ライフ」は大好きな曲でした。ただビジュアルはピーター・フォンダだけだと思っていたのですが、リンゴ・スターもあったんですね。しかも「リンゴ・スターのブルース・ハーモニカ・プレゼント」なんてやっていたんですね。これは意外でした。…リンゴ・スターがファッション・ブランドのポスターとはねぇ…。
46年前の雑誌(1977年5月号)をめくりながら、昔の広告の中に現在との感覚の違いを探し出してみるのは案外面白いものです。個人的には、元気過ぎる1980年代の情報よりも、70年代後半あたりの、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われ始める前あたりが面白くていけません。1960年生まれの私のティーンとも被りますからね。今でこそ忘れられた、反キリスト教も兼ねたウーマン・リブのムーヴメントは上手いおとしどころが見出せず、私なんぞにはなかなかに息苦しい世の中でもありました。