7インチ盤専門店雑記397「バドの客演」
先日デクスター・ゴードンの「アワ・マン・イン・パリ」が常連さんの元に旅立ちました。大事に聴いてくれそうなので、レコードもウチにあるよりいいでしょう。
デクスター・ゴードン、とりわけ好きでも嫌いでもないのですが、ものの本で勉強していると「GO」と「アワ・マン・イン・パリ」は必聴となっておりますし、ジャズを聴き始めた頃から随分聴いた音源です。ただし興味の中心はピアニストの聴き比べだったりしたもので、どうもリーダーの演奏があまり印象に残っておりません。ピアニストは「GO」がソニー・クラーク、「アワ・マン・イン・パリ」がバド・パウエルでしてね。その後も結構ハマるソニー・クラークが好きなタイプということを確認した作業のようでした。
それから30年ほどが経った今、どちらが好きかというと、バド・パウエルの方に軍配を上げるかもというところまで変化してきました。結局のところ、CDで名盤と言われるものしか聴いていなかったバド・パウエルの魅力に今頃気が付いてしまったようなものです。
まあ我流の聴き方ですから、フツーのジャズ評論家先生たちがおっしゃることとは受け取り方が違ったようで、バド・パウエルのリーダー作は素晴らしいことはよくわかる、でも古い、感性が古過ぎるのではないか…といったあたりですが、今となっては全部古いわけですから、感じ方も変わります。そして何故か客演も気になるんです。バッキングには向かない人でしょうからね。バドの客演について触れられているジャズ本は、そう多くありませんでした。
最近何がいいかって、「Jazz At Massey Hall」です。1953年5月のライヴ音源です。The Quintetと名乗っておりますが、チャーリー・パーカー、チャールズ・ミンガス、ディジー・ガレスピー、バド・パウエル、マックス・ローチの5人です。「ソルト・ピーナッツ」が耳から離れませんが、結局全編好きで繰り返し聴いたりしております。
加えて、マッセイ・ホールでも一緒にやっているチャールズ・ミンガスの「ミンガス・アット・アンティーブ」というのにバドが客演しておりまして、時期的には1960年7月にスイスのアンティーブで録音されたもので、ここで一曲だけですけど、バド・パウエルが弾いているんです。曲は「I'll Remember April」、Side3を一曲で占める14分弱の長尺演奏ですが緩みません。全然流れるような演奏ではありませんが、歌っています。…実際にも歌ってます。3管がちょいと音が多すぎて好みではない部分でもありますが、エリック・ドルフィもいい演奏をしています。
これがここしばらくで聴いたジャズ・レコの中で最も気になった一曲だったりします。70年代に入ってからリリースされた未発表音源みたいな盤ですが、あまりジャズ本で紹介されていないので、有名盤ではないのでしょう。でも何だかいいんだな…。個人的な名盤というヤツですかね。こういうパーソナルな「好き」をもっと集めたいなと考えています。
…自分が生まれた年の空気感としても、興味がありましてね。↑ 貼り付けておいた動画ですが、バド・パウエルのソロがお気に召さないような聴衆の表情が捉えられていますが、こういった聴衆の服装や反応も含めて、求めていた空気感だったりします。