7インチ盤専門店雑記301「マイ・ディア・ライフ」
オーディオテクニカのサウンド・バーガーというレコード・プレイヤーをご存知でしょうか?一定の年齢以上の音楽好きには懐かしい代物です。40年前の製品の復刻なんだそうですが、アップデートされておりまして、ブルートゥースで出力できます。正常進化ですね。
40年前というのが実に面白いタイミングでして、要はCDが世の中に登場し、デジタル・オーディオというものにみんなが驚かされたタイミングに出てきたわけです。デジタル・オーディオというものは、如何せんLPとCDの比較でお分かりのように、ポータビリティという意味では魅力的なものでした。コンパクトでしかも取り扱いがシンプルで利便性は圧勝という印象でした。ノイズが少ない高音質化という方向性も有しておりましたが、80年代のCDはチープな鳴りのものも多かったですから、一概には評価できない代物ではありました。まあ、ノイズが無く、いきなり鳴り始めるのには驚きましたよ。
…そのタイミングで、アナログのポータビリティを追求した製品として登場したわけです。まあ、最悪のタイミングでしたね…。さて、40年後にアナログが復活しているとは予想できませんでした…というか、あそこまで一気に衰退するとも思っていませんでしたけどね。40年後に、ブルートゥースでサウンド・バーガー…、アリなのではないでしょうか。昔ながらの針圧調整だのフォノ・イコライザーがどうのといった面倒なことは一切抜きにして、ブルートゥース対応のイヤフォンにアナログ盤の音を飛ばせるわけですよ。もちろん、スピーカーにも繋げるわけですが、イヤフォンとサウンド・バーガーさえあれば、もう音楽が聴けてしまうという、その手軽さですよ、注目すべき点は。ラインアウト用のミニ・ジャックもありますが、ケーブルレスでアナログレコードを楽しめるという部分は大きいかと思います。
実際、ウチのお店でレコードを買っていかれるお客様のおそらく50%程度はレコード・プレイヤーをお持ちでないようなんです。アナログ・オーディオ再開予定という方も多いんです。大好きだった盤を飾っておくだけというのもアリですが、せっかくなら音を聴きましょうよ…。
まあ、そんなサウンド・バーガーのデモ機をオーディオテクニカさんからお借りしまして、楽しんでおります。音楽がお好きな常連さんたちと、「凄いね…」「Amazonでも手に入るよ」「黒じゃないな、やっぱり黄色だな」などと言いながら盛り上がってしまいます。オーディオテクニカ60周年を記念して7000台限定で発売された赤いヤツは、速攻で売切れたということです。…メルカリで売りに出てますけどね、いいお値段で…。ヒェ~、さすがです。
実は、オーディオテクニカのカートリッジを試してみないかとお声がけいただきまして、喜んでと回答したところ、カートリッジ3種と一緒にサウンド・バーガーもお持ちいただいたというわけです。何はともあれ、聴き比べが好きなもので、いろいろ楽しんでおります。
いやあ、実際いろいろ聴いてみて、これほど鳴らせると思っていなかったというのが正直なところです。お世辞抜き、営業抜き、意外なほど鳴ります。ラインアウトにして、お店の大きいスピーカーで鳴らしたら、ターンテーブルの聴き比べとなるわけですが、ブラインド・テストなんかやられたら全く自信ありません。
渡辺貞夫の「マイ・ディア・ライフ」の、あの深みのある音、ちゃんと鳴ります。レファレンスにすると言うか、試聴に使うのはちょいと酷かもという「マイ・ディア・ライフ」ですが、一応合格点です。振動吸収素材を貼ったりして…、キリがないですね。…いやはや、楽しめますよ、コレ。