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7インチ盤専門店雑記511「アメリカ万才」

スティーヴ・ミラー・バンドは当初シカゴでブルース・バンドとして活動を開始しますが、シスコに移ってサマー・オブ・ラヴを一通り経験し、1968年6月にレコード・デビューを果たします。シングル的には「Sittin’ In Circles」というアルバム未収録曲でデビューということになります。不発で翌年リカットしますが、やはり売れませんでした。ファースト・アルバム「Children Of The Future」からはシングル・カットはなしです。

セカンド・アルバム「Sailor」は1968年10月リリースですから4か月後のセカンド、…凄いですね。それだけ注目されてもいたのでしょう。この時期チャック・ベリーが丸抱えでライヴ盤をリリースしているということからも実力は認められていたのだと思います。「Sailor」からは「アメリカ万才 Living In The U.S.A.」をカット、94位まで行きます。

翌1969年にも2枚のアルバムをリリースします。6月に3rd「Brave New World」、11月に4th「Your Saving Grace」です。3rdは英国録音、ポール・マッカートニーとのセッション「My Dark Hour」収録、シングル・カットもしますが、126位どまりです。…以前にも書きましたが、貴重な経験の持ち主ですね。

1970年には「Jackson-Kent Blues」を含む5th「Number 5」をリリースします。…これも先般書きましたが、グッジョブです。

その後交通事故で少々活動ペースを落とし、メンバーも変えつつ71年に6thアルバム、72年に7thアルバムをリリースし、73年に8th「The Joker」の大ヒットにこぎ着けます。昨日も書きましたが、73年10月に「The Joker」、74年4月に「銭は紙くず」をシングル・リリースします。面白いのがこの次に68年の「アメリカ万才」をリカット、再発するんです。74年7月20日発売です。

そこで気になるのがこの曲の歌詞です。…やっぱり、となるわけで、かなりシニカルにアメリカで暮らすことの居心地の悪さを歌っているわけですね。全然アメリカ万才じゃない内容です。この曲をヒット曲が出た後にリカットしますか…。グッジョブです。「Jackson-Kent Blues」でヴェトナム戦争に対する抗議行動中に州兵に射殺された大学生のことを歌った後でもありますしね。

中学生の頃、曲が気に入って、英語の歌詞の意味なんか分からずに聴いていた連中ですが、ここしばらくSteve Miller Bandのシングル・ディスコグラフィを眺めていて、ようやく理解しました。80年代になってセカンド・アルバムを購入したとき、何で懐かしく感じる曲が入っているのか理解できずにうやむやになっていた疑問が、30数年の時を経て氷解しました。一応1972年にリリースされたベスト盤「Anthology」からのシングル・カットという位置づけになっているようですが、74年に突然そこからシングル・カットなどと言われても違和感しかないですね。ヒットが出て知名度が上がったところで、「もう一度言いたいことを言わせていただきます」というヤツでしょ、コレ。

ちなみに、1983年5月にもライヴ盤からシングル・カットということで、もう一度「アメリカ万才!」がシングル・カットされます。ライヴですから歌詞が微妙に違うところが面白いです。…ただしWikipedia等ではなかったことにされているようです。何でなんですかね…。

さらにちなみに74年盤「アメリカ万才」のシングルB面「Kow Kow Calqulator」も反戦歌ですね。何ともぶっ飛んでいる歌詞なんですが、やはり反戦歌でしょう。これ、英語の読解力の有る無しじゃない気もしますから、政治的なメッセージが込められたと言いづらい歌詞ですが、お時間がありましたら、ぜひご一読を。いやはや、面白い人だ。


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