見出し画像

7インチ盤専門店雑記862「The Other Side Of Desire」

リッキー・リー・ジョーンズの通算13作目のアルバム「The Other Side Of Desire」です。2015年にリリースされたものですが、前作から随分時間がかかりましたね。まあリッキー・リー・ジョーンズの場合、アナログ盤が出るなら躊躇なく購入しますが、これも即購入しました。この人の場合、あまり多くプレスしないのか、直ぐに売り切れてしまうんですよね。

前作が2012年の「The Devil You Know」ですが、これはカヴァー集でしたから、シンガー・ソングライターとしてのリッキー・リー・ジョーンズとしては2009年の「Balm In Gilead」以来ということになります。Fantasyからリリースされたこの2009年盤があまり好みではなかったもので、「もうあかんかな…」とも思いましたが、意外にも「The Other Side Of Desire」は非常に出来がよろしかったのではないでしょうか。世間一般の評価もそれなりに高かったように記憶しております。

いかにもシンガー・ソングライター然とした趣きのアルバムでして、仕切り直した感がハッキリ見てとれます。ニュー・オリンズに引っ越して、2年ほどかけて作ったということですから、それなりの評価を得て然りなのでしょうが、2年間スタジオに籠っていたわけではなさそうですけどね。

レコーディングもニュー・オリンズのMusic Shedということで、ニュー・オリンズのミュージシャンをいっぱい起用したかと思いきや、一人でやったみたいですね。まあ一人というと語弊がありまして、プロデューサーのJohn Porterと二人で作り込んだようです。John Porterはイギリス人ですが、B.B.キングやジョン・リー・フッカー、ケブ・モーあたりのブルースマンのプロデュースをやる人です。ロキシー・ミュージック/ブライアン・フェリー人脈としても有名ですかね。

ニュー・オリンズ録音ということを考えると、この「The Other Side Of Desire」というタイトルの意味するところが、違う意味にとれますね。…通りの向こう側ですかね。ニュー・オリンズにあるDesire Streetという有名なエリアがありまして、元々はナポレオンの婚約者のDesiree Claryという人の名前にちなんでつけた通りの名前がミスでeが一個落ちてしまい、欲望という意味のDesireになってしまったという、笑い話のような由来のある通り/エリアの名前なんですね。テネシー・ウィリアムズの戯曲「欲望という名の電車」はこの通りの路面電車を意味しているとか…。いろいろですね。

でもわざわざこのタイトルにしたのは、ニュー・オリンズへのオマージュもあるようで、この盤は彼女自身のレーベルThe Other Side Of Desire からリリースされています。そんな事情からも、ほぼ自主制作盤のようにも思えますから、シンガー・ソングライターの自省的な盤という世評も間違ってはいないのでしょう。

リッキー・リー・ジョーンズはデビュー盤がいきなり大ヒットでしたから、全盛期という言い方が難しいのですが、やはり彼女の話題となると80年代のアルバムに集中します。どうしても1~3作目あたりが評価も高いと思います。それでも、この盤は同等の評価を得てもよろしいのではという出来です。シングル・カットした「Jimmy Choos」は売れたわけではありませんが、必聴でしょう。…MVはご本人が登場しますが、御年を召されたなという印象とともに、引き込まれる映像で、やはり一見の価値ありです。


いいなと思ったら応援しよう!