ツンドク?読んどく ⑯
おいしいものでできている→LA本 2021/07/02
エリックサウス創業者、飲食店プロデューサー、自称変態料理人の稲田俊輔(イナダシュンスケ)さん初の書き下ろしエッセイ「おいしいものでできている」
小難しくてカクカクシカクな論文みたいな文章じゃない ”ですます体” で、すぅっと入り込める文章なのに、まぁ食べ物の考察の深いことといったら!
27の食べ物への偏愛が、ただ味がどうだ、名店の味はここが違う!ってなグルメ話じゃなく、青少年期から大人の稲田さんが体験した味の記憶が詳細に語られ、それは食文化考というところまで大胆鋭く書かれ、読み手は時には苦笑、同感、爆笑で、ああ、面白かった、おいしいもの食べたときみたいにほのぼの シアワセ な気持ちになる。
本の最初「幸福の月見うどん」は、食エッセイというより優れた短編小説とでもいった出来で、彼が思うところの ”世界最高の卵料理” である ”月見うどんの卵黄を破ってうどんをすする最初のひとくち” の一秒単位の味の変化が克明に語られ、その ”一回きりの尊い儚さ” から人生論が重なるという構成の見事さ。
フリークならではの着地点。
ここまで語ることができる稲田さんって・・・ナニモノ?
すごい食エッセイの書き手出現!
レシピとその料理家を分析研究した傑作本「食べたくなる本」の著者、三浦哲哉さんの二作目の食エッセイ本も気になって借りた。
「LAフード・ダイアリー」
LAで映画研究のために家族で一年間暮らした映画研究者の食生活エッセイ本。
と思いきや、一年間のLA滞在記録といった感じ。
映画論在り、アメリカ食文化論ありの、ちょいと研究レポートといった堅苦しさもある一冊。
ただ ”ゲリラ・タコス” の章は三浦哲哉節絶好調の章で、私は思わず Amazon でゲリラ・タコスのオーナーシェフ Wesley Avila 氏のレシピ本を買ってしまった。
メキシコ料理、あるいはアメリカにおけるメキシカンについて、私は全くと言っていいくらい知らないから、余計に憧れが募る。
ページをめくりながら、何かに似てるなと。
ああ、日本のスパイスカレーだ!
ベースとなる部分の上に自由な発想で味が重ねられていく創作料理。
ああ、コーントルティーヤ食べたいっ!
トマティーヨっていう食用ほおずき、食べてみたい。日本じゃ売ってないわね、いやいや、ネットで種買えるみたいだから、自分で育ててみる?
”世界はおいしいものでできている。シアワセもだいたいおいしいものでできている。” ~「おいしいものでできている」表紙より抜粋
梅雨でも梅雨明けようが、見知らぬ国の食文化への好奇心と夢想は、生きる喜びとなる。
これでいいのだ。これでいいのさ。