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私はすっかり魅せられている。砂の岬~桜新町

降りたことのない駅で降り、初めてのまちを歩く。
「砂の岬」というインド食堂へとむかって歩く。


まだかしらと思いながら歩いていると、蔦に覆われた小さな二階建ての家が見えてきた。 
店の前の簡素な木のベンチにはお客さんが一人座っている。 
次々とひとがやってきて、ベンチに腰かけて順番を待つ。

あっ、ジャスミンライスの匂い!
ときどきミルクと紅茶葉とスパイスの香りがふわりと漂う。 
座り心地のいいベンチに腰かけて30分待って、店に入った。

大理石で作られたカウンターへ案内された。 
温もりが伝わってくるアンティークの椅子に座って、小さなお店の中をながめる。 

初めてなのにただいまと帰ってきたような、そんな居心地にしてくれる不思議な食堂。 
もう私はすっかり魅せられている。 

お水が運ばれてきて、グラスのブルーと質感にうっとり。

少し待つと、チェティナードミールスがサーブされた。 

なんてきれいなミールス! 
彩りや盛りつけが一枚のプレートの中できちんと計算された見事さ。

こんなふうに心をつかまれるランチって、そうそうあるものじゃあない。

「砂の岬」というインド料理店の名前は知ってはいたけれど、桜新町に来る用事もないだろうし、電車に一時間少しゆられてまでこのお店に来ることはないなと思っていた。
数年前ならいざ知らず、ランチのためにわざわざ遠出はしなくなったからだ。

ところがネパール料理に使うラプシーについてネット検索していたら、このお店のブログ記事がヒットして、記事にはラプシーの使い方について書いてあり、「砂の岬へ」というブログの写真や記事はどれも素晴らしかった。

「砂の岬」のHPもみてみると「9日間限定チェティナードミールス期間」という文字が! チェティナード(Chettinado)料理~インド タミル・ナードゥ州のチェティヤールとよばれる商業カーストに属する人々の料理~に私はとても興味がある。
これはもう砂の岬に行くしかない。

しばらくミールスに見とれていた。 

それから順番に丁寧に味わっていく。

あっ、ちがうな。 
ひと匙口に運んで気が付いたこと。 
それはお客さんへサーブするタイミングをきちんと考えて作られているということ。 

例えば大量に作られて、スパイスの香りも沈んでしまっているものに出会うことがある。
だけど全体の献立の面白さや組立で、それはカバーされていることも多い。

砂の岬のミールスには、妥協せずに構成され、組み立てられた強い意志の佇まいとでもいったものが感じられるのだ。
空間にも料理にも、長い時間をかけて醸し出される豊かさが在る。
そこにすっかり私は惹きつけられてしまった。

献立の内容はこちらで~ 私が長々書かなくても一目瞭然。

http://file.sunamisanews.blog.shinobi.jp/0803949d.jpeg

ゆっくりと、ひと匙ひと匙、味をたどる。 
それからすべてを混ぜて、手指で口に入れいただいた。

ああ このお店に出会えてよかった。

食事が終わって二階へと上がってみた。

 

カーテンのむこうの部屋も、こだわりのある雰囲気。

チョコレートチャイをゆっくり飲んで、静かな充実感に浸る。

まだまだ待っているお客さんがあるので店を後にして、桜新町の駅へと急ぐ。

いつまでも、いつまでも続く余韻。 
たぶんこれからもふらっと旅に出るように、私は何度も「砂の岬」を訪れるだろう。


それから図書館で予約して本を借りた。
一行も飛ばすことなく、丁寧に読んだ。

不器用なカレー食堂  著者:鈴木克明 鈴木有紀  晶文社

これは 2016/11/26 に訪問したときの記事です。


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