君と見た、あの丘でもう一度桜を
【1-4:晴れ時々桜吹雪】
「まずはあの公園にいこう」
そう言ってとある公園に向かう。
その公園は、葵との深い思い出に関係している。
歩いている道中、懐かしい思い出に浸っていた。
「この道を頻繁に葵と歩いていたんだっけ。なんかいつになっても葵はずっとべったりで離れなかったような気がするな」
そう言葉にすると、桜が舞い、人が数人現れた。
「思っている感情を思い出すたびに現実世界に戻っていくのかもしれないな」
そう直感で思った矢先に、見慣れた影が二つ。
「葵と、俺……?」
なぜか自分もいることに驚いて言葉を失う。
その時にはこんなセリフが流れていた。
「ね、葉涙さ、わたしと付き合わない?」
(…………)
これは数ヶ月前に葵に告白された時の時間らしい。
(なんて言ったんだっけ……)
彼は口を開く。
「俺、今誰とも付き合う気がなくて……。あ、葵が嫌いとか、そういう分けじゃないからな! ただ、今はその気分じゃないってだけで……」
「…………」
(こんなこと言ったんだな、俺は)
葵は口を閉じている。
何か考え事をしているのだろう。
「……わかった。じゃあ、その気になったら私と付き合えるってこととして捉えておくね」
「はいはい」
(…………)
俺は最低だ。
そんな軽く大切な親友を振り、しかも適当にあしらっていた。
(なのに、葵はずっとついてきてくれている。なんて心が広いのだろう)
ただ広いだけではない。
その後もおそらく冷めずにずっと関わってきてくれているのだ。
(この世界から戻ったらまずは謝ろう)
葵はああ見えて意外と寂しがりだ。
何時間もLINEで通話しながらじゃないと寝れない体質だったりする。
「…………」
ふと、やはり、と思うところがあった。
「やっぱり俺の一番の相手は葵なんだろう。それを確認すべく、いろいろな場所を回って確認してみるか」
そう言って学校や葵の家、秘密基地なんかにも行ったりした。
でも、どこに行っても葵と俺は常に共に行動をしている。
共にご飯を食べたり、ゲーセンで同じ商品をとったり。
「やっぱり、俺には葵がないと何もできないってことなんだろうな」
そう結論づけて家に帰宅する。
そして三枚目の紙に「蜜葉葵」と記す。
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