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機内のゲロ事情


久しぶりの更新で、こんなタイトルでごめんなさい。

昨年秋ごろから転職、息子の骨折や母の入院とバタバタの日々を過ごし、年が明けてようやく落ち着いたと思いきや、息子と共に胃腸炎になり吐き散らかしたりしておりました。

ということで、今日は機内のゲロにまつわる思い出話を。


CAとして働いたことのある人なら、避けられないであろうこの問題。

私もバラエティ豊かなゲロシチュエーションに出くわしてきた自負がある。
その中でも特に、ある日のパキスタン線が忘れられない。


その戦いは、離陸前から始まった。

お客さまが順番に搭乗されている時。
テンション高めの子どもが急に吐いた。

そしてその子につられて、兄弟がもらいゲロ。

あらあら〜と思いながら急いで処理をしていたら、斜め後ろあたりからヴェェェェェという恐怖の音。

中年男性、ちょっと時差ありのもらいゲロ。

まあ、これはしゃあない。
飛び始めてまだ1ヶ月も経っていないような新人クルーの男の子と一緒に、「ご搭乗ありがとうございます」と言いながら処理に励んだ。


新人クルーの彼はピュアな瞳で、ひたむきに一生懸命に片付けていた。
飛び始めて早々すごいの引いてるなあ、と思いながら私も一緒に手を動かす。

もらいゲロの波は3人目で無事に差し止められ、処理も終わり、ようやく離陸という時。

トイレからとてもあやしい音が聞こえた。


まさかの新人クルーの男の子、トラウマの思い出しゲロ。かわいそうに。


まだ地上やのに4ゲロはなかなかやったなあと思いながら、乗務員も着席し離陸。


ようやく飛行機はお空へ。
シートベルトサインが消え、サービスの用意を始めようと席を立ち動き始めた時。

通路に吐き主不明のゲロ発見。

こちらをお吐きになった方はどなたでしょうか、と叫ぶわけにもいかないので、周りのお客様に体調は大丈夫ですかと聞いてみたものの、皆さまこれは私のじゃないですというお顔。いや絶対あなたたちの中の誰かやろ。

吐き捨てられたままでは機内食を配ることはできないので、吐き主不特定のまま急いで処理。

ただでさえ慌ただしいスケジュールのフライトに、処理が嵩んでバッタバタだった。

どうにかこうにかサービスに辿り着き、なんとか機内食をばら撒くように配り終えたその時。

トイレが使えないとお客様からのお呼び出し。
確認してみると、トイレの手洗い場に、ゲロ。

機内のシンクに吐かれてしまったら、もう終わり。詰まって溢れかえってしまうので、着陸後にエンジニアに直してもらうしか方法はなく、上空ではどうしようもできない。

仕方なくそのトイレを使用不可としブロックした。

そしてそのたったの数分後、本当に信じられないことに、もう1つのトイレのシンクにも同じ現象が発生。

あと1歩足出せば便器に吐けるのに、なんでやねん???????と叫びたい気持ちを抑え、無心でこちらのトイレにもロックをかける。

3つしかないトイレのうちの2つが、ゲロ詰まりシンクにより使用不可能。130人ほどいるお客様、トイレは残り1個。これは非常にピンチ。

クルー一同が死んだ目をし始めたその時。
新人クルーの男の子が1人、生き残った最後のトイレの横に立っている。

彼は変わらずピュアな目をして、
トイレを使おうとするお客さま1人ひとりに、
「お吐きなる際は、どうぞ便器へ。」
と声掛けをしていた。


真っ直ぐな彼の、お吐きものを便器へ誘導する心からの気持ちはお客さまへも伝わった模様だった。

彼に突然、見て!と呼ばれてトイレをのぞく。
ゲロ in 便器。わーよかった。

普通なら抱くであろう、吐いたものは自分で流してほしいという気持ちなんぞもうこの時には湧き上がらなかった。便器に吐いていただけるだけで大歓喜。

便器の中のゲロを見て誰かとハイタッチをしたのは、後にも先にもこの1回だけだろう。


そんなこんなでフライトは終盤へ。
ゲロ処理本業、機内サービス副業状態のゲロパーティーからようやく解放される。

1秒でも早く終わらせたい気持ちで片付けを始めた時に、食べ終わったトレーを手渡ししてくれたおばあちゃん。
回収しようと受け取ったが、離してくれない。

2人で1つのトレーを持っている謎の時間。
なにこれ?こういう儀式?

するとおばあちゃんはニコッと笑って、そのままトレーの上にばばばばーっと吐いた。


トレーに乗せたゲロをこぼさないように慎重に運んだ、24歳の春。



3時弱で、9ゲロ。
時間単位で計算したらこの日がおそらく最高記録。

その翌日、私は謎の熱に見舞われた。そりゃそうやわ。

出くわしたゲロのバラエティがあまりに富んでいたので、一体どこのどんなウイルスか分からずとってもこわかった。


私のトップ・オブ・ゲロ思い出話でした。
数ヶ月ぶりの更新がこんな内容にも関わらず、ここまで読んでくれたあなた、ありがとう。


ちなみにその日以来も、突然パキスタン線に召集されることが度々あり、

3時間9ゲロの記録には及ばないものの、私のパキスタン線ゲロ遭遇率は100%のまま、CA生活を終えました。

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