満月のせい。

サービス業というものに40歳になって初めて着いた。意外と自分向いてると思うことの方が多いけれど、たまにとんでもないのにも出会う。その場合大抵は客人、お店に入る前から鼻息荒めで来る。私はそういうのを意外とキャッチしてしまう。気づかずにいられればどれだけ幸せだろう。

(絶対買うつもりもないのに)「ディスプレイのあの商品試したいんだけど」と言われる。「残念ながらディスプレイの商品は非売品となっておりまして、こちらに同じ柄のお色違いございますがいかがでしょうか」と言うと、この私の(絶対買う気ないだろ?)と言う内なる言葉が客人に聞こえてしまうらしい。「あれが試したいの!」「残念です」を繰り返し「あなたの名前は?!」「シャンレイです」と言うやり取りをし、数日後会社に「アジア人の店員が」と言う苦情メールが届く。律儀だね、負の仕事は早い。  上司から「こう言うメールが来たけれど、シャンレイかな?説明してください」と言われ私からと数名の同僚からも証言をとりそれを鑑みて、こちらからの謝罪は不必要とし「またのご来店をお待ち申し上げております」と言う定型文での返信となったと後で聞いた。とりあえず謝っておけ、ということをしないのだと知って驚いた。  

苛立ったお客さんやら、理不尽な返品要求など負のエネルギーをバンバン発して来るお客さんがその日なぜか続き『今日なんか変だよね』と同僚と一息ついて顔を見合わせ『あっ、もしかして今日満月』と気づいた。 

そうと分かると理不尽に吹っかけられる負の圧も『あ、この人満月で少しおかしくなってる』と少し笑ってかわせるように様になった。       わたしサービス業全然向いてないか。