静岡県民がリニアに何故反対するか考えてみたら日本の政治の縮図だった
静岡知事の川勝平太がリニアの静岡県区間の着工を認めていないために、リニア中央新幹線の開業が遅延している。他県民からしてみると、静岡県民は何故こんな事をするのか理解できないだろう。
実際に、全国地上波やXやなんj等ネットを見れば、静岡県民に対する反対意見やヘイトがたくさん見られる。なぜこれほど多くの批判にさらされているのに静岡県民はリニアに反対、川勝知事を支持し続けているのか。静岡県民の立場から考えてみようと思う。
過去事例:丹那トンネル 反対派に利用される科学知識
丹那トンネルとは熱海-函南間を通る1934年開通のトンネルである。工事は非常に難航したが、開通によってこの地区のアクセスが非常に改善した。しかし、このトンネル工事によって農業に欠かせない湧水が減少し多大な被害を受けたという過去がある。100年以上も前の話だが、静岡県民にはこの件をきっかけとしてJRに対して根強い不信感を持っている。
どのぐらい不信感を持っているのかというと、下記のJRの報告を信じられないぐらいである。
1.JRはリニアのトンネルに出た湧水は全て静岡県側に流す。
2.リニアの工事期間中は技術的に難しいため、その期間は水量が減るのは我慢してほしい。
3.その減少する見込みの水量は「極めて小さい」。雨が数回降るか降らないかの程度だ。
まかりなりにも地下水流出に関する論文執筆を行ったことがある筆者としては、正直この件に関しては、JRのいう事が正しいと思う。
スポンジ(大井川流域)に串(トンネル)が刺さっている。刺す前と後とで流れ出る水の量は変わらないだろう。それと同じことだ。
丹那トンネル工事を行った当時は地下水の動向の科学は全然発達していなかったため、大した検討もせずに工事を行ったのだろうが、現在はこの分野も発達し、的外れだろうが検討事項など無限に作れるのである。
分析は、要因の大きな順から検討する事で、正確性を徐々に増す。
懸念の提案は楽だが、否定は難解だ。
通常の公共工事では大きな要因が判明したら、そんな細かい検討をしているのならさっさとやっちゃって目に見える利益を得た方が良いでしょ、という考えで行われるので、大きな要因が判明したところで、ゴーサインがでるのであるが、今回の問題では、静岡県側にはリスクこそあれど利益はないため、要らない懸念点を上げて、工事を遅らせる事は可能だ。
そしてオールドメディア(静岡のテレビ、新聞)では、やれこの検討をしただの、報告会をしただの報道が行われ、川勝知事の露出が増える。科学的な知見のない市民からすれば、なんか川勝頑張ってるな!という感想に至るのである。
縮小再生産されるニュース、まさに無限キテレツ地獄
日本全国で少子高齢化が起き、投票権を持つ人の高齢化が起きているように、静岡県で高齢化が起きている。
そして投票権のある年配層は地元のオールドメディア(県内テレビ、新聞)
しかみず、ネットは見ないのだ。
全国ニュースならできる事や報道する事はいくらでもあるが、静岡県内など毎日興味が出るニュース等はそうそうでない。しかしながら、県内メディアとしては、毎日の記事を作らなければならない。その結果何が起きるのかというと、過去に起きたでかいニュースを何度も縮小再生産する事になる。
2023年現在の静岡県ニュースは、かつおの盗難事件、袴田事件、熱海土砂災害、リニア問題の永久ループである。
なんとか対策委員会が設立したという話で、10分も尺をもたすんじゃない!!!どうせ時間をとるならもっと深く報道しろ!!という風に思うのだが、テレビ局も大変なのだと思う。ネットにシェアと取られる中で、取材にかけられる時間も減るだろう。予算と時間が減っていく中で同じ長さのニュース番組を制作し続けなければならないとすると、浅い内容で縮小再生産した番組を作らざるを得ない、加えて人は歳をとると理解力が衰える。苦労して深く難しいニュースを流しても視聴率は稼げないのである。
思えば、私が子供の頃から、県内テレビ局では、番組作りに四苦八苦していたのだろう。夕方5時台では、ワンピースを最初から放送したのちに、また最初から放送するという事を行っていたし、キテレツ大百科やちびまる子ちゃんの同じ話を何度も見ていたような気がする。テレビをつければ小学生のサッカーの試合までやっており、退屈の極みだったのだが、大人になった今でも同じ事をニュース番組で味わうとは思いもよらなかった。
リソース的に深いテレビ番組が作れないとすると、定期的に火種を投下してくれる川勝知事はテレビ局にとってはありがたい限りであろう。コロナ自粛期間中に長野県に帰省、御殿場市にはコシヒカリしかない発言、更にその失言のために返上するはずのボーナスを返上していない等、ここ数年で数々のネタを提供し続けている。
特にリニアの問題は、ネタの宝庫である。長野知事との対談、神奈川県知事との対談、JRとの対談、対策委員会との対談、大井川流域住民代表との対談、対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談対談。
対談するだけで、無限にニュースの生産が可能である。本来のメディアが機能していれば、批判や賛成の意見も言うのだろうが、その意見を言うに足る下調べもできない状況なのだろう。そして今日も対談の内容には踏み込まず、ナメック星編のドラゴンボールのように、前回までのあらすじと川勝知事(界王様)の感想が述べられニュースが終わる。
この状況は川勝知事にとっても徳だ。批判もされず、単にメディアの露出のみが増えて頑張ってますアピールができる。単純接触効果というものがある。人に会った回数が多ければ多いほど、その人を好きになるという効果である。
これが久保ひとみと川勝知事の人気の秘密だ!
さてここまで話せばお分かりの通り、日本の平均年齢は約50才、田舎ではもっと高い。老人票が得られれば、県知事としては職務を継続する事が出来る。そのため、静岡県民はしばらくはリニアに反対し続けるだろう。
そして広がる世代格差 テレビを見る老人とネットを見る若者
老人はオールドメディア(テレビ、新聞)を見続ける事で、川勝知事を支持し、リニアに反対という態度になり、一方でネットを見ている若者からすれば、リニアには賛成という態度になっていく。インターネットの登場によって、意見の相違が大きくなっているのだ
これはどの政策でも当てはまる事で、若者向けのネットメディアでは、年金の貰える額が少ない事をしきりに報道しているが、オールドメディアを見ている老人はそんなことは知らない。若者はSNSで子育て世代の苦労や奨学金の返済の苦労を共有している一方で、老人は学費が自分たちの時よりも高くなっている事など知る由もないだろう。
情報の共有がされなければ、意見の分断が起きる。それによって相手が自分の事を思いやっていないのだから、自分も思いやらなくてもいいやという気分になる。
世代間だけでなく、地域間でも同じだ。
日本で一番裕福な東京都民が”都民ファースト”といって自分の地域しか考えていない政治家に投票するならば、静岡県民だって自分の県しか考えない政治家に投票するのは当たり前である。
政治が自分を無視していると感じた時、
あなたは誰かを無視しているのである。
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