漫画原作 堕落すると言うこと(4776字)
創作大賞2024応募作 #漫画原作部門
登場人物
川田ヒロシ Fランク大中退、かっとなる性格、短絡的に決めてしまう思慮
に欠ける。街中華の店で働き、やっと居場所を見つける。
辻五郎 恵まれた辻財閥の御曹司、会長
由美 ヒロシの同級生、恋人、ヒロシに愛想をつかし別れる。
街中華店 親方
おかみさん
パートすみこさん
牧田進 辻五郎の子供の時からの護衛同級生、秘書、役員
土田社長 辻商事の社長で実権は無い
赤田社長 辻赤建設会社社長
黒田社長 辻黒電気会社社長
立花 リムジンの運転手
あらすじ
Fランク大を二年で中退したヒロシはウーバーイーツをしながら不安定な、その日暮らしをしていた。
ある日、日焼けした自分の顔と身体に漂うホームレス臭を感じて、嫌気が差しウーバーを辞める、街をぶらぶらしていて、街中華の店に貼り出されていた古風なバイト募集の張り紙に引かれ、街中華店のバイトになる、
親切で家族的な店の経営者のお陰でアパートも借りてもらい、
住み込みの様にして働いていた。
いつもの様に白衣を着て出前の配達中、黒塗りの外車に絡まれて、連れ去られてしまう。
ヒロシは訳けの分からないうちに、豪邸に閉じ込められてしまう。
豪邸の主は辻財閥の会長辻五郎で、彼はヒロシに息子に引き継ぐまでのワンポイント後継者になれと言う、ヒロシは彼のカリスマ性を目の前にし、とても自分はその器ではないと断るのだが、立場が人を作ると辻は訊かない、辻は取り巻きの五人の部下の一人牧田にヒロシの改造教育を命じる、
牧田はヒロシを見るなり、お前は夕張出身かと訊く、ヒロシがそうだと答えると、川の近くに住んでたかと訊く、そうだと答えると、牧田はその話をしなくなる。
ヒロシは牧田が幼稚園の時、川で溺れていた自分を助けてくれた小学生に似ていると気づく。
ヒロシは修行のために隆川市の関連会社に顧問の形で出向する。
牧田は教育係としてヒロシに同行する。
牧田はヒロシに、この会社ではあなたの命令は絶対です、
逆らう者には罰でも、首でも構いません、あなたの好き勝手に殺人以外でしたらなにをやっても、どんな指示をしても、構いません、ここで統治を学んでください、オーラを身に着けてくださいという。
この会社では、社員の家族親戚全てを関連会社で丸抱えし、指示に逆らえないシステムが出来上っていた。
また密告制度もあり、密告者に報奨金が与えられる制度もあった。
また何かミスをした時は一族郎党いなくなる
根絶やしシステムも出来ていた。
ヒロシは牧田の助言で、絶対服従の部下を持ち、どんどん変質しオーラを放ち始める。
一方ヒロシは、勤めていた,街中華店のスタッフはみな財閥系の企業に世話になり、手厚く援助され以前よりいい暮らしをしていると聞かされていたが
それは、嘘だった。
金持ちになり、生活の安定したヒロシは再び由美に連絡して交際を試みるが再び振られる。
ヒロシは良心の呵責に苦しみながら、暴君を演じていた、
ついにヒロシのパワハラで自死する者も出た。
そんな時、辻五郎の死が告げられヒロシは本社に戻る。
重なる様に米国で恐慌が起こり世界的不景気に襲われる。
ヒロシは強権を生かし、非合法寸前のブラックなギャンブル仕事も行い危機を乗り切る。
時は過ぎ辻五郎の息子への権力の禅譲の時が訪れるのだが、
ヒロシはそれを拒否して、創業家の人々の株を奪い、その痕跡をを根絶やしにし、一族郎党を社会的に抹殺しようとする。
しかしヒロシは街で偶然、出前の配達をしている親方を見て、何故か涙が止まらなくなる。
牧田のアドハイスでヒロシは笑顔の絶えない街中華店に戻る決断をする。
了。
第一話
リムジン車の中
辻五郎は苛立って
辻五郎
「何度言わせるんだ。うちと関係の無い者なら誰でもいい、
地位が人格、オーラーを作り出すんだ。誰がやっても同じだ」
秘書の牧田
「しかし、会長、お言葉ですが・・・・」
走行中の車内から辻五郎が出前の男を見かける
辻五郎
「車を止めろ、そこの出前の男で良い」
車が止まり,秘書達が出前の男(ヒロシ)を車に拉致押し込む
ヒロシ
「何するんだ」
秘書牧田
「黙って、話を訊いてください」
ヒロシの回想
・ウーバーイーッのバスケットを背負い自転車で走るヒロシ
・公園トイレの鏡を見て顔を洗うヒロシ
ヒロシ
「臭えな、ホームレスの匂いだ、ヤメタ、ヤメタ退職だ」
・公園トイレから出て携帯でメールを打っている
・頭をかかえるヒロシ
「また、やっちまった。俺はクズだ、また無職だ」
・携帯で電話しているヒロシ、すぐ切られる
「由美、俺ヒロシ、ウーバー辞めたから、」
バシと切られる。
・ヒロシと由美がケンカしヒロシが由美にビンタされる様子
「いつもそう、勝手に決めないで」
「ごめん、僕が悪かった」
ビンタ
「お互いが不幸になるわ、別れましょ」
・街を彷徨うヒロシ当てもなく歩くカットが3~4カット
・街中華店に、求むアルバイトの古風な張り紙
・店に入るヒロシ
「アルバイトの求人まだ募集してますか」
親方出てきて
「兄ちゃんやる気ある?」
ヒロシ
「やらせてください」
食堂のおかみさん、パートのスミコさん
・店員として配膳する姿から出前する姿から一生懸命に働くヒロシ
家庭的な店の人間関係、みんなで笑う姿が数カット、ヒロシは
幸せで、初めて居場所を見つけたシーン
ヒロシは出前の岡持ちを持って自転車に乗る
辻財閥会議室
秘書牧田
「・・・以上で辻財閥の説明は終わりです。そして辻財閥を率いるのが辻会長です」
辻五郎
「お前を私の後継者にしたいと思う、条件は私の息子が成人したら引き継ぐこと。それだけだ。」
ヒロシ
「何だか解んないけど、僕はFランク大中退で、物事よく考えないし、スキルもない、出来る分けがない」
辻五郎
「地位が人を作る。大丈夫だ。お前には子会社の顧問となって隆川市本社に出向してもらう、教育係に牧田をつけてやる、金ならいくらでもある、心配するな、やるか」
ヒロシ
「給料はいくらですか、」
辻五郎
「ばかを言うな、お前が給料を決めればいい」
ヒロシ
「やって見ます」
辻五郎
「よし、牧田、後は任せた」
ヒロシ
「最後に一つだけ、何故私なんですか」
辻五郎
「あの時、岡持ちを持ったお前がいたからだ」
第一話 おわり。
第二話
隆川市 辻商事本社会議室
決算報告会の看板
正面テーブルに、中央に川田ヒロシ顧問、右に取締役牧田秘書、
左に商事土田社長が座っている。
牧田がヒロシの耳元でささやく
「顧問、安心してください、私がフォローします。
ドンとしていてください」
向かいのテーブルに一人報告者の赤田社長
牧田
「ただいまより、決算報告会を開会します。赤田建設社長始めてください」
赤田社長
「今期の赤田建設の決算は、大変厳しいものとなりました。」
牧田がヒロシにそっとメモを渡す。
メモの内容
怒って、赤字の会社が椅子に座って、偉そうに話していいんですか
メモの内容をワンカットで表示する。
そっと、そのメモを受け取った川田ヒロシ顧問が
ヒロシ顧問
「赤字会社の社長が、椅子に座って、偉そうに、話していいんですか」
赤田社長
「申し訳ありません」
慌てて椅子から降りて、土下座して深々と頭を下げて
「申し訳ありません、赤字を出してしまいました」
また牧田が顧問にメモを渡す
ヒロシ顧問
「あやまっても、床を舐めても、赤字は無くなりませんよ」
赤田社長は汗をかきながら
「ごもっともでございます」
牧田が顧問にメモを渡す
ヒロシ顧問
「社長、あなたの奥さんはうちの会社で働いていましたね、おや、奥さんの実家はうちの代理店ですか、社長のお父さんも当社の役員をなさっていた。これでは、親族あげての鼻つまみ者ですね、このままでは、親族の皆さんに迷惑がかかりますよ」
赤田社長は震えながら
「顧問、どうか親族の方は、お目こぼしいただきたくお願いします」
牧田が顧問にメモを渡す
ヒロシ顧問
「そんな事を言っているから、改善できない,一回思いっきり恥をかいたらどうですか」
赤田社長
「はい、どういう事でしょう」
ヒロシ顧問メモを見て
「そうですね、この会議のメンバーの前で、三回まわって、ワンと言いなさい」
赤田社長はその場で三回まわって、
「ワン」
と言って泣き崩れた
ヒロシ顧問
「おや、それは汗ですよね、」
牧田
「それでは次の会社に参ります」
次の黒田社長が座った
黒田社長
「辻黒電気会社の今年度の決算は十五億の黒字を計上し・・・」
ヒロシ顧問メモを見て
ヒロシ顧問
「黒田社長にコーヒーをお出ししなさい、大変ご苦労様でした」
・会議は休憩に入った
ヒロシ
「驚きました、本当に厳しいものですね」
牧田
「信賞必罰で、悪いものは一族ごと消滅させます、それが権力者の務めです。いい暮らしはそれでないと実現できません」
・会議弁当を前にしてヒロシは回想していた
・街中華店で働く人々のカット、出前するヒロシ、みんなで笑って賄いを食べている。カット
・最後に三回回ってワンと言う社長のカット
・弁当を前に、ぼーとしているヒロシ
牧田
「顧問どうされました、料亭の三万するべんとうですよ」
・弁当の大きいカット
ヒロシ
「何だか食べれそうに、ありません」
牧田
「大丈夫です、地位が人を作る。会長の言葉を思い出して下さい、
良い暮らしの為です。」
・元気なく弁当を食べ出すヒロシ
第二話 おわり。
第三話
ヒロシの住む邸宅リビイング
・くつろいでいるヒロシと牧田
牧田
「突然ですが、ヒロシさんは夕張出身ですか」
ヒロシ
「そう、夕張出身です」
牧田
「川の近くですか」
ヒロシ
「むかし川で溺れた事がありまして」
牧田の回想
・川で溺れている幼児を助ける小学生のカット
牧田
「そうですか。ここに来て三か月ですね、誰か友達とか呼んで、
気分転換でもしたらどうですか」
ヒロシ
「呼んで、いいですか」
ヒロシの寝室
・ヒロシが由美にメールしている
由美へ
新しい仕事について、うまく行っています、旅費は出すので
来ないか、一度会って謝りたい。
隆川駅
・由美が時計を見てヒロシを待っている
・リムジンに乗ったヒロシが現れる、ドアを開けて
ヒロシ
「待ったゴメン、さあどうぞ」
・車内で運転手を怒る
ヒロシ
「何でお客様をお迎えに出ないんだ、運転だけならロボットで出来る
運転手はサービスが出来てあたりまえ、俺に恥をかかせるのか、おい、訊いているのか」
運転手
「申し訳ありません」
由美
「どうしたの、運転手さん気にしてないわ、
ヒロシは偉くなったの?」
ヒロシ
「とにかく、家に行こう、話しはそれから」
ヒロシ邸宅リビイング
・ソファに座っている二人
ヒロシ
「辻財閥の会長に見込まれて、後継に指名されたんだよ」
由美
「そんな事ってあるの」
ヒロシ
「僕と一緒なら信じられるよ」
由美
「別世界の人になったのね、変わったわ」
ヒロシ
「地位が人を作るんだよ、どお、オーラでてる?」
由美
「オーラ、? 恐い人になったわ」
ヒロシ
「金はある、ブランドものだって、おしゃれだって、何でも出来る
僕ともう一度やり直そう」
由美
「さっき、運転手さんを虐めていたわね」
ヒロシ
「注意しただけだよ」
由美
「そんな人信じられない、帰るわ」
・邸宅から出て行く由美
・由美の後姿を見送るヒロシ
回想 ワンルームの部屋でお茶を飲んでいるヒロシと由美
街中華店のたのしい、思い出シーン、忙しく働き笑っているヒロシ
リビイングに一人座っているヒロシ
その隣で立って話しかける牧田
牧田
「住む世界が違うんですよ」
牧田がヒロシに無言で話しかける
あなたが、この会社にいる限り全能の神で、甘く見られてはいけない。
あなたは、恐れられて尊敬されなければ、いけないのです。
ヒロシ
「人を信じ意見を聞いてはいけないのですか」
牧田
「そういう世界は忘れた方がいい、但し聞いた振りをするのは重要ですね」
・ヒロシと牧田は、窓から夕陽が沈んで行くのを見ている。
第三話 おわり。
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