見出し画像

日本の行政―活動型官僚制の変貌

本の紹介は初のため、拙い文章ではありますが何卒ご容赦ください。

今回紹介する図書は、村松岐夫先生著「日本の行政―活動型官僚制の変貌」です。この本が書かれたのは1994年ですので少々古めかしい内容かもしれませんが、現代でも十分に参考になる図書だと思っています。では、つらつらと書き綴っていきたいと思います。

「最大動員」

本書では、日本の行政のシステムを説明する用語として「最大動員」が使われる。最大動員とは「行政に利用できるリソースに関してできるだけ能率的に使用すること」を指す。

日本における公務員の数は、主要先進国と比較すると非常に少ない。その中で日本はリソースを最大限利用する独自の行政プロセスを築いてきたのだという。

民間を含む下部組織との連携

中央省庁単独では行政を行うことはできない。そのため、中央省庁は行政の多くを「地方政府」「業界団体」「町内会・防犯協会」に対して委任していた。

中央省庁は勿論そうした組織が目的を達成しているか十分に監視はしていたが、それは上からの一方的な命令ではなかった現場の情報量では下層組織が優位であったため、上も無碍に扱うことはできなかった。

特に地方政府の役割は他国と比較しても大きく、国全体の歳出7割、歳入3割を占めていた。地方政府は地元で生じたニーズを「中央行政」や「地元の政治家」を通して上に働きかけることによって、実現していた。

よく日本では中央集権的だと批判され、「地方分権」が叫ばれるが、実際には決定権は下方に分権化されていたのが実態のようである。

「外交」行政

上記の通り、行政の多くを下方に委ねている日本では、中央省庁の役割は「組織間関係の調整(=外交)」であったという。組織間関係は非常に複雑であるため、ともすれば、癒着すらしなければ目的を達成することができなかった。「官僚として成功」するための資質に官僚自身があげた選択肢として「交渉力」がダントツであったことから鑑みるに、こうした「外交」行政が、トップにとって非常に重要であったことが伺える。

政治家の働き

政治家の役割は上でも述べたように、地元のニーズに応え、利益を還元することであった。また、業界団体との利害調整にも奔走した。長い間政治家を務め、所謂「族議員」の段階にまで行くと、専門の知識では官僚すら上回り、業界団体との調整に関しても融通の利く独自のネットワークを持っていた。

かつての日本では「政治」も「行政」も非常に活動的であったのである。

ボトム・アップ型行政

以上に見るように、日本では下方から上方への行政プロセスがとられ、アメリカの様な上方から下方へのトップ・ダウン型の行政とは異なる独自の行政を行っていた。日本の行政は批判されることの多いが、どちらが良い悪いは一概には言えないのが真実なのである。

あとがき

以上は本の内容を非常に簡潔にまとめたものですので、ここでは書けなかった興味深いことが本書では書かれおり、ぜひ一読をお願いしたいと思っています。紹介文の中では過去形で書かれることが多かったかもしれませんが、勿論日本の行政がある程度変遷を遂げている一方で、今なお、こうした行政のプロセスが根底にはあると思っています。

では。

#推薦図書 #日本の行政 #政治 #行政 #村松岐夫 #読書

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?