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「ヒールを履いたとき、違和感を感じたんですよね」
数回目の沖縄旅行から帰ってきて、会社へ出勤した朝。車から降りていつものヒールで歩き始めると、足に違和感があった。昨日までは、一日中ビーチサンダルを履いて、ビーチの砂のジャリジャリとした感覚と一緒に過ごしていた。足が汚れても、濡れても、それはそれでいいやと思えるような、そんな感覚がすごく好きだったんだなと気付いた瞬間だった。沖縄で暮らしたい、と自覚するようになったのはこれがきっかけだったように思う。
今でこそ「KuToo運動」のような動きがあるけれど、それまでの私は会社にヒールを履いていくということに何の疑いも持ったことがなかった。むしろヒールを履いたほうが足がきれいに見えるし、気持ちも引き締まる、そんな風に考えていた。当たり前と思っていた暮らしや働き方に、「もしかして違うのかも?」と何となく感じるようになった。
当時から、沖縄旅行の情報収集のためによく見ていたサイトがある。
https://calend-okinawa.com/
「CALEND-OKINAWA」には、単なるグルメ情報やモノの紹介だけではなく、店主さんの思いや商品にまつわる物語が綴られていて、記事そのものが読み物としてまとめられている。ここに登場しているみなさんが、時々沖縄移住の経緯を語っていることがあった。
コツコツ音を立てて歩きながら、もし自分の沖縄移住の記事を書くとしたら見出しはこれだな、と浮かんだ一文が「ヒールを履いたとき、違和感を感じたんですよね。」だった。いつか、この見出しを付けた記事が書けたらいいな、そんな風に思うようになっていった。
そのあとに続く文章は当時はまだ見えていなかったけれど、今は少しずつ、記事のプロットくらいは作れるかなという気がしている。企画に10年以上かけてしまったけれど、それはそれで、自分に合うときが今だったということなんだろう。
「違和感を大切に、当たり前に固執しないで、やる前からできないと思わない」ということは、そういえばずっと大切にしてきたことだった。
10年以上ヒールを履いた私の足、小指は変形して爪もつぶれている。毎日サンダル生活になったら、元に戻ることもあるのかな。
(↑2016年8月ウッパマビーチにて。朝ドラが「ととねえちゃん」だったころ。)