「名古屋市上下水道経営プラン2028(案)」に対するパブリックコメント 結果発表

 「命の水を考える会ぎふ」のfacebook記事からの引用。
 水道民営化、上下水道事業関連のパブリックコメントを提出する際にご参考下さい。

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 2020年3月26日、「名古屋市上下水道経営プラン2028(案)」に対するパブリックコメントに対する回答が公表されました。

 意見募集の対象が名古屋市民に制限されていなかったため、岐阜市民である私も意見を送ってみたところ、意見を文書に記載して頂き、ご回答も頂きました。

 名古屋市 からは、水道民営化については『「名古屋市上下水道局PPP/PFI手法導入優先的検討指針」に基づき民間事業者の優れた技術・ノウハウの活用について検討を進めていきます。』、「上下水道局では、地方公営企業として持続可能な事業運営を目指し、さまざまな官民連携の手法を研究していきたいと考えています。市民生活や社会活動に必要不可欠なライフラインとしての特性を踏まえ、本市が責任を持って、安心で安全な水道水の供給に取り組んでいきます。」との回答でした。

 この回答は、岐阜市の回答に比べると、はっきりコンセッション方式導入を否定しているとはいえません。

 下記に私が送った意見と名古屋市からの回答を記載します。
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< 意見 >
 名古屋市上下水道経営プラン2028(案) の34頁には「6-2 業務執行体制の見直しと官民連携の推進」と題し、業務の民間委託、PPP/PFI手法の導入に関する記述があります。

 私は、水道民営化、コンセッション方式の導入は絶対にしてはいけないと考えます。
 理由は、欧州先進国の先行事例では、物価上昇を上回る水道料金の値上がり、サービス水準の低下、河川や湖の汚染、不透明な経営、必要な設備投資が行われない、自治体が民間事業者に対し利益を保障する契約を締結、民間事業者が自治体に対し損害賠償訴訟を起こそうとしている等、数々の問題が発生し、再公営化した自治体も数々存在するためです。

[ フランス ]
 1984年にヴェオリア社、スエズ社とコンセッション方式を締結したパリ市では、1985年から2009年の間に物価が70%上がる間に水道料金が265%上昇、2001年に水道再公営化を公約に掲げたベルトラン・ドラノエ氏が市長選で当選し、2010年に水道再公営化、水道事業の理事会を市議11名、労働者代表2名、市民社会5名(監視機関1名、上下水道専門家2名、環境NGO1名、消費者団体1名)で構成し、効率化によって3,500万EURを節減し、料金を8%引き下げた。

[ 英国 ]
 1989年に水道事業を完全民営化したイングランドでは、25年間で物価が2倍に上がる間に水道料金は3倍に上昇、ロンドン水道の運営をしているテムズ・ウォーター社が、事業収益をケイマン諸島のタックス・ヘイブン等に逃して節税し、会計の負債を膨らませ、老朽施設の更新の投資を怠ったが、英国政府の規制機関は会計のトリックを見抜けなかった。
 イングランドの水道事業では、年間約18億1292万ポンドの配当金が投資家に支払われ、約14億6498万ポンドの利息が金融機関に支払われており、再公営化した場合、1世帯当たりの水道料金が年間111.27ポンド節約できるとの試算がある。
 英国保守党議員マイケル・ゴーヴ氏は、2018年、ユナイテッド・ユーティリティーズ社のCEOが年間約4億円の報酬を得ていることを示し、「水道事業会社は利益を上げているが、それらを株主配当と幹部の給与に費やし、税金を支払っていない」と批判。

 PFIの先進国である英国では、2018年1月18日、英国会計検査院が報告書「PFI and PF2」の中で「PFIが公的な財政にプラスであるという証拠は乏しい。」、「総じて公的に資金調達されたプロジェクトよりPFIスキームは高くつく。」、「学校建設の分析では政府が直接ファイナンスするよりも40%割高。」、「PFIでは、公共による資金調達よりも2から4%(一部では 5%も)資金調達コストが高く、さらに多額の付加的な費用(資金調達のアレンジメント・フィーが元本の1%程度、マネージメント・フィーが事業総額の1~2%程度など。)がかかる。」、「公共部門にとっては、25年から30年という長期スパンでは費用がかさむとしても、短期又は中期的(5年程度)で見ると負債を圧縮できるので魅力的である。このため公共部門の意思決定がPFIに好意的になり、PFI事業を進めるために、Value for Money評価が甘くなる。」、「英国財務省はPFIのメリットとして、事業リスクを民間に移転できること、長期的なランニングコストが軽減されること、を挙げていた。しかし、実際にはこれらは概ね実現されず、PFI事業は開始時には予見していなかったコストをカバーするために高くついた。」と結論付け、2018年10月29日、フィリップ・ハモンド財務大臣は、「今後新規のPFI事業は行わない」と宣言。

 上記より、水道民営化、PFIやPFIの一類型であるコンセッション方式を導入することは、名古屋市の財政にとっても、住民にとっても、メリットに乏しく、デメリットが多いといえます。

 したがって、水道民営化、PFIやPFIの一類型であるコンセッション方式の導入を行わないよう、名古屋市上下水道経営プラン2028の中に明記して下さい。

 加えて、営業関連業務、維持管理業務、施設運転管理業務の民間委託はせず、職員を増やして技術力を継承し、直営を堅持すべきだと考えます。

 最後に、国は一般会計から公営企業会計への繰入をしないよう公費投入基準の厳格化を主張していますが、今後のインフラ更新をすべて料金収入と公営企業債だけで賄うのは厳しいと考えます。
 インフラ更新のための繰入を認め、国による建設国債発行により財源を確保し、維持管理費のみ住民の受益者負担とする部分独立採算制にすべきだと考えます。

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< 名古屋市の回答 >
[ 水道民営化、民間委託、PFI方式、コンセッション方式 ]
・ 堀留水処理センターの上部空間については、関係局による庁内プロジェクト協議会にて条件整理等を行ったうえで、民間ヒアリング等を含む事業化検討等を進めることで、都心部にふさわしい魅力ある空間にしていきたいと考えています。
・ 春日井浄水場の凝集沈澱池の更新にあたっては水源水質の急変など水源をめぐるリスクにも対応できるよう整備を行います。また、「名古屋市上下水道局PPP/PFI手法導入優先的検討指針」に基づき民間事業者の優れた技術・ノウハウの活用について検討を進めていきます。
・ 上下水道局では、地方公営企業として持続可能な事業運営を目指し、さまざまな官民連携の手法を研究していきたいと考えています。市民生活や社会活動に必要不可欠なライフラインとしての特性を踏まえ、本市が責任を持って、安心で安全な水道水の供給に取り組んでいきます。

[ 職員を増やすべきだという意見に対して ]
・ 職員としての基本的能力の養成や、実務に根ざした職務遂行能力の維持・向上を図るとともに、経営環境の変化に応じた職員の能力開発も図っていきます。
・インターネットを活用した管路情報の提供などをはじめ、ICT技術を積極的に活用し、事業運営の効率化や高度化、働き方改革などに取り組んでいきます。

[ 部分独立採算制について ]
 その他いただいたご意見については、今後の事業運営の中で参考にさせていただきます。
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[引用元] https://www.facebook.com/dra.chu.505/posts/216962379628260

■ 『2020年3月26日 「名古屋市上下水道経営プラン2028」の公表について』(名古屋市上下水道局 / 2020年3月26日)
https://www.water.city.nagoya.jp/category/30700kisyahappyou/143075.html

■ 「名古屋市上下水道経営プラン2028(計画期間:令和元~10年度)」(名古屋市上下水道局)
https://www.water.city.nagoya.jp/category/koso/143057.html