【総研トレンドセミナー:前編】オンライン化が進むギフト市場の現状と未来〜ユーザーが感じているギフト選びの「不」とは?〜
日本におけるオンラインギフト市場は、年々拡大を続けています。2020年に行った調査では、ギフトの購入場所1位はデパートや百貨店の店頭でした。ところが直近2022年に行った調査では、ギフトの購入場所1位は総合ECサイト。百貨店を抑え、初の首位となりました。
このように時代と共に変化するギフト市場を調査・研究し、新しいギフト文化の兆しを発信したいと、ギフトモールでは2021年にオンラインギフト総研を発足しました。本記事ではオンラインギフト総研が2022年12月に行ったギフト調査と、矢野経済研究所による「2022 ギフト市場白書」をもとに、ギフト市場の現状と未来について小川所長に解説してもらいます。
小川安英
Giftmall オンラインギフト総研 所長
日本のギフト市場は10兆円で安定推移。フォーマルギフトが減少し、カジュアルギフトが増加傾向に
日本におけるギフト領域の市場規模は約10兆円です。2015年からの推移を見ると、2020年・2021年のコロナ禍で若干の凹みはあったものの、その影響はかなり小さく、比較的安定推移をしています。
10兆円の内訳として特徴的なのは、フォーマルギフトが減少傾向にあるのに対し、カジュアルギフトが増加傾向にある点です。フォーマルギフトとはお中元やお歳暮、カジュアルギフトとは誕生日やクリスマス、父の日や母の日のギフトを指しています。
2015年に3兆5420億あったフォーマルギフトは、2023年に2兆8640億まで減少する見通しとなっています。一方のカジュアルギフトは、2015年の4兆2845億が、2023年には5兆3830億にまで拡大するというのが矢野研究所の見立てです。
ギフト市場でシェア拡大を続けるインターネット通販とソーシャルギフト
では、10兆円に及ぶギフトはどこで購入されているのでしょうか。購入チャネルの推移を時系列で表したものが以下です。
ここで注目すべきは、インターネット通販の伸びです。コロナ前の2019年は2兆円強だったインターネットでのギフト購入が、2023年は2兆8500億円。約45%UPという予測になっています。また、ソーシャルギフトも1580億円から3900億円にまで拡大する見通しとなっています。
インターネットでの購入、並びにソーシャルギフトがギフト市場でシェアを伸ばしている状況です。
コロナ禍でも、ギフト予算は大きく変わらず。購入場所に大きな変化
ここからは、オンラインギフト総研が2022年12月に行った調査をもとに、ギフト市場の動向を詳しくご紹介します。まず、コロナ前後でギフト購入の予算、贈った人の数、購入したギフトの総額に変化があったのかを聞いた調査結果がこちらです。
Q.コロナ禍のこの約3年間(2020年2月~2022年12月)で、ギフト購入の以下に関して、変化はありましたか。(n=2,400)
ギフト1回あたりの予算が減ったと回答した方は2.3%、やや減った方は5.5%でした。一方で、予算が増えた方が6.5%、どちらかと言えば増えた方が16.3%という結果でした。69.4%の方は変わらないと回答しており、全体として大きな変化はなく、むしろ増えた方のほうが多いという結果になりました。コロナ禍であっても、ギフトに相当する行為はさほど影響を受けなかったことが読み取れます。
続いて、ギフトの購入場所に変化があったのかを調査したものが以下です。こちらは大きな変化が見られました。
2020年、購入場所の1位はデパートや百貨店の店頭で51.5%、2位の総合ECサイトは38.5%でした。また、我々のようなギフト特化型のECサイトは21.6%という結果でした。
ところが直近の2022年では、総合ECサイトが51.1%となり、初めて百貨店を逆転して首位となりました。ギフト特化のECサイトも26.1%まで伸びています。今や4人に1人がギフト特化のECサイトで購入経験がある状況になっています。
ここまでECサイトが伸びている背景には、コロナ禍で外出の機会が減った影響が考えられます。
「相手の好みが分からない」「何を贈ったら良いか分からない」依然として大きい、ギフト選びの「不」
続いて、ギフト購入に関する悩みポイントを調査したものがこちらです。
Q.あなたはギフト購入の際に、以下のことを感じたことはありますか。(n=2,400)
「相手の好みが分からない」「何を贈ったら良いか分からない」「相手の好みに合うかが不安」が上位3つの悩みポイントとなりました。
ギフト選びは、誰かに何かをあげるワクワクするようなイベントである一方、自分で使う商品とは違い、贈る相手がいる行為です。相手に満足してもらえるかどうかが、やはり大きな不安材料になっていることが見てとれます。
ギフト需要と自家需要では、重視する項目が大きく異なる
自分で使う、家で使う自家需要と違い、ギフトには贈る相手が存在します。そのため、ギフト選びでは相手に喜んでもらえるか、満足してもらえるかという点がパラメーターの1つとして存在します。相手のことを考えて行動するからこそ、ギフトに特化したサービスが求められるのだと我々は考えています。
では具体的に、自家需要とギフト需要ではどのような違いがあるのでしょうか。購入の際に重視するポイントを比較したものがこちらです。
ギフト需要の重視項目TOP3は品質、見た目(包装、パッケージ)、評判・口コミです。一方の自家需要では、品質は当然1位ですが、2位が価格、3位が量・ボリュームという結果になりました。
この調査には、ギフト需要と自家需要の特徴が端的に表れています。相手に贈るものだからこそ、ギフトでは品質はもちろん、見た目も美しく、評判の良いものが求められているのです。
時を経ても変わらないギフトの目的、時代と共に変化する贈り方と贈る物
ここで、ギフトが過去から現在までどのように変化してきたのか、その変遷をご紹介します。
贈る目的、Whyの部分は昔から未来永劫変わらないものだと思います。お祝いや感謝、激励といった気持ちを届けたいというのがその目的ではないでしょうか。
一方で贈るタイミング(When)や贈る品物(What)、あるいは購入する場所(Where)は社会環境やテクノロジーの進化によって多様化が進んでいます。特にタイミング(When)については、昭和以降、カジュアル化が進んでいます。この背景にはオケージョンを創出してマーケティングをしてきた歴史があります。
オケージョン(When)の多様化
例えば1932年、神戸のモロゾフ製菓さんがバレンタインデーにチョコレートを贈るというムーブメントを起こされました。元々は西洋で愛する人にお菓子を贈っていた文化を、日本でもやろうと起こされたものです。
また1936年には母の日という運動が開始されました。これは森永製菓さんが母の日に感謝の気持ちを伝えようと起こされたものです。このようにオケージョンを機に、大切な人に気持ちを伝えようという動きの中で、ギフトのカジュアル化が進みました。
スマホ普及以後はちょっとしたプチギフトを贈ったり、スタンプを贈ったりと、ソーシャルギフトのような動きも生まれ、よりオケージョンの多様化が進んでいます。
贈る品物(What)の多様化
贈る品物(What)も時代ごとに定番化、多様化しています。バレンタインのチョコレートや母の日のカーネーションはまさに定番化された商品です。百貨店のカタログギフトや商品券、旅行会社の旅行券も、ギフトの定番となりました。一方でインターネットが普及すると、色々な商品が検索できるようになり、定番から一歩外に出て多様化していく動きも見られるようになりました。
ソーシャルギフトや、パーソナライズギフト、名入れギフトが広がり、定番商品のさらなる多様化が起きています。最近では、もともとギフト商材ではなかったものを「ギフト化」する動きも出てきています。例えば体験自体をギフトとして贈ったり、スタンプのようなデジタル商材や何かの権利をギフトとして贈ったりと、多様化の流れが加速しています。
このようにギフト市場では、常に新しいものが生み出され続けています。逆に言うと何かが突然なくなったり、一気に何かに置き換わったり、ということはあまりありません。層が積み上がるように多様化が進んでいます。カスタマー自身がその時々に応じて、相手に喜んでもらえそうな商品を選ぶ時代に突入しています。
本記事のまとめ
ギフト領域の市場規模は10兆円で推移しています。コロナ影響でダウンすることもなく、比較的安定して推移をしています。その理由には、人とのコミュニケーションの総量自体がさほど変わっていないことが考えられます。「ギフトを贈る」という贈答行為は、時代の変化に影響を受けづらい安定的な市場と言えます。
一方、ギフトの購入に目を向けると年々インターネット上での購入が拡大しています。また、ギフト購入には依然として多くの負が存在しており、特に大きな悩みは「相手に喜んでもらえるか」という点です。今後はテクノロジーの進化に伴い、ユーザーの「負」を解決できるサービス提供が求められます。それによってギフトの商材や購入方法、贈り方は大きく変化する可能性があるのではないでしょうか。
後編はこちらから。
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