総合商社からMagicalTrip創業、そしてLUCHE GROUPへ。アセットをフル活用して生まれた「Annyお祝い体験」開発の舞台裏と成長ポテンシャル
訪日観光客をターゲットに、ローカルツアーサービスで人気を博しているMagicalTrip株式会社。サービスを通して世の中をもっとハッピーにしたいという方向性が合致していたことから、2021年にLUCHE GROUP傘下に入りました。その後、ギフトモールとMagicalTrip、双方のアセットをフル活用して「Annyお祝い体験」が誕生。短期間で急成長を遂げました。そんなAnnyお祝い体験を生み出したのはどんな人物なのでしょうか。
こちらの記事では、MagicalTrip創業メンバーでAnnyお祝い体験のプロダクト責任者を務める岩瀬僚介に従業員5万人の総合商社から、2人のベンチャー企業へと飛び込んだ経緯、MagicalTripの誕生秘話やAnnyお祝い体験を短期間でリリースした舞台裏について話を聞きました。
岩瀬 僚介
MagicalTrip株式会社 取締役
アメリカとメキシコを行き来する商社マン時代。そこで芽生えた「自分で一から事業を創りたい」という想い
−岩瀬さんのこれまでのキャリアからお話を聞かせてください。
新卒で豊田通商に入社し、自動車関連の事業部に配属されました。担当地域であるアメリカ、メキシコと日本を行き来しながら自動車部品のトレーディング事業や海外営業、事業投資に従事しました。
4年ほど働いた頃、新しいことを始めたい、もう少し小さな規模で事業を回してみたいという気持ちが強くなってきました。そんな時にMagicalTrip株式会社の代表で、前身となるライブラ株式会社を経営していた鈴木と出会いました。世の中を変えられるようなプロダクトを作りたいと意気投合し、すぐに参画を決意しました。
−当時のライブラはどんなサービスを展開していたのでしょうか?
鈴木が個人でコンサルティングサービスを提供しているような状況でした。創業2年目で社員はかろうじて一人いたくらいだったと思います。
−思い切った決断ですね。
そうですね。従業員5万人の会社から2人の会社へ(笑)。ただ、この人となら面白いことができるのではないかという期待感がありました。この時点でどんなサービスをやるかは全く決まっていませんでしたが、世の中をポジティブに変えていけるプロダクトを作りたいという想いは一致していました。
観光地を巡る旅から、ローカルの価値観を共有する旅へ。外国籍のエンジニアを通して気づいた、日本の楽しみ方
−旅行サービスに目をつけた背景を聞かせてください。
ネガティブな課題をゼロにするサービスではなく、ポジティブに課題を解決する、ワクワクするようなサービスを創りたいという考えが根底にありました。その上で旅行が好きだったこと、旅行業界のオンライン化があまり進んでいない点に目をつけました。
1年半ほどかけて、色々な事業を検討し、トライ&エラーを繰り返しました。旅行プランを自動で生成できるウェブサービスや、アクティビティのチケットを取り扱うマーケットプレイスなどです。様々なトライアルをする中で2018年に生まれたのが、ローカルガイドサービスのMagicalTripです。
−MagicalTripはどのように着想を得て生まれたのでしょうか。
当時のライブラ株式会社ではエンジニアの採用を強化していました。将来的にグローバルなサービスを展開したいという想いから、外国籍の方を積極的に採用していたんです。皆で仕事終わりによく飲みに行っていたのですが、そこで日本の居酒屋文化はすごく魅力的だという話になりました。
ちょうどその頃、海外から日本に来るインバウンドが増加していたのですが、観光客にはどうやって日本を楽しんだらいいかわからないという課題がありました。人気の観光地に行って写真を撮って、観光地やホテルのレストランで食事をする…それいいんだっけ?という課題です。本当にその場所に住むローカルな人と話し、ライフスタイルを感じ、価値観を共有する。旅行でしかできない、特別で「本物の体験」を提供できないか、という考えありました。
そこでその地で生活をするローカルガイドが軸となって、旅行者だけでは見つけられないような居酒屋を巡る、飲み歩き体験を提供したら面白いのではないか?という話になりました。そこからバーホッピングという飲み歩きのツアーの企画が生まれました。この発想は日本人だけでは考えつかなかったと思います。
−外国籍エンジニアとの会話がきっかけで着想を得たのですね。
そうです。バーホッピングを新宿でスタートし、渋谷や浅草、大阪、京都、広島、札幌…とエリアを広げて展開していきました。さらに体験自体の拡張も進めました。食べることにフォーカスしたフードツアーやサイクリングツアー、秋葉原のアニメツアーや原宿のファッションツアー、両国の相撲ツアーなど多岐に渡ります。
ちょうど2018年に通訳案内士法という法律が変わり、ライセンスがなくてもガイドができるようになりました。“Travel deeper with a Local Guide”というコンセプトで、ローカルなツアーガイドを集めながら、観光客を集客しました。インバウンドの追い風もあって、参加者は右肩上がりに増えていきました。
MagicalTripはこれまで当たり前だった旅行の在り方を変える。そんな強いポテンシャルと確かな手応えを感じていました。
コロナ禍で観光客はゼロに。同じカルチャーを持つ、LUCHE GROUP傘下入りを決める
−そこに来たのがコロナ禍ですね。
そうです。参加者数のギネス更新を見込んでいた2020年の冬、コロナ禍によって参加者はほぼゼロになりました。
−その間はどうしていたのですか。
急遽、オンラインで街案内をするバーチャルツアーを企画し、1~2ヶ月でリリースしました。旅行に行けない中、バーチャルで浅草寺に行ったり鳥居をくぐったりする体験を作り、販売しました。
もう1つは自治体や官公庁からいただいた観光創出事業のプロジェクトです。幸い、MagicalTripは業界内で注目されていたこともあり、行政から認知されていました。コロナ明けの復活を目指して複数のプロジェクトを受注しました。
−コロナ期間中にLUCHE GROUP傘下にも入りましたね。
そうですね。会社の思想、目指す方向性が近しいこともあり、2021年に傘下入りしました。その後、MagicalTripのメンバーが主体となって「Annyお祝い体験」をリリースしました。LUCHE GROUPにジョインしてからの半年間で、企画から開発までを一気に手がけました。
LUCHE GROUPのギフト×MagicalTripの体験。得意領域の掛け算で生まれた「Annyお祝い体験」
−ものすごいスピード感でリリースしたんですね。「Annyお祝い体験」はどのような経緯で生まれたのでしょうか。
ギフト領域に強いLUCHE GROUPとMagicalTripの強みである体験の創造。両者を掛け合わせた軸で検討し、生まれたのが“お祝い体験”でした。
レストランサイトは色々ありますが、例えばプロポーズしたいと考えた時、どうやってレストランを探せばいいか考えると、意外と選択肢がないことに気がつきました。「お祝い」という軸で整理されたサービスがないんです。そこから「最高の“一生に一度”をあなたに」というコンセプトで、Annyお祝い体験が生まれました。
−MagicalTripのノウハウが生きた部分はありましたか?
新しい体験を創造する点は、MagicalTripのツアー設計と近しいものがありました。例えば、プロポーズプランでは食事の後にリムジンに乗ってドライブができたり、ディナーの後に併設のチャペルでプロポーズができたり。特別なプランを企画・設計し、レストラン側に協力を仰ぎました。
また、体験を魅力的に見せるためのUIUX設計、お祝いプランの運用設計といった面でもMagicalTripのノウハウはかなり生かせました。そのノウハウがあったからこそ、6ヶ月という短期間でサービスをリリースすることができたのだと思います。
一方で開発メンバーは一人を除いてあとは全員外国籍です。日本特有のお祝い文化や慣習に馴染みがありません。例えば両家顔合わせとは何なのか、なぜ個室である必要があるのか?このあたりの意味付けや、抑えておくべきポイントはかなり丁寧に共有した上でサービスを開発しました。
毎月450組のプロポーズ、400組の両家顔合わせを支える熱量の高いサービス
−逆にLUCHE GROUPのアセットやノウハウが生きた部分はありましたか?
ギフトモールのアセットは立ち上げ当初からフル活用しました。ギフトモールのメディアにAnnyお祝い体験の情報を掲載したり、ギフトサービスのAnnyでメルマガを発信したり。元々ユーザーとの信頼関係が出来上がっている中で、グループサービスとして認識してもらえたので、サービス立ち上げ当初から一気にユーザーを増やすことができました。
現在では毎月450組にプロポーズプランを提供し、400組の両家顔合わせに活用されています。
−かなりインパクトのある数字ですね。
実際にユーザーさんからの嬉しい声もたくさん届いています。プロポーズ成功しました!と写真付きで送ってくださる方や、いい雰囲気で顔合わせができました、最高の誕生日ディナーになりました…など多くのレビューを頂いています。中にはかなりの長文レビューもあり、日本人ってこんなに熱いレビューを書くものなのかと僕らも驚いています。
MagicalTripにも海外の方から熱いレビューがたくさん寄せられているので、ユーザーの熱量が高いという点で近しいものを感じています。
花束やメッセージカード。“お祝いアイテム”で最高のお祝い体験を
−Annyお祝い体験の今後の展望についても聞かせてください。
より多くのお祝いニーズに応えるべく、レストランの開拓を続けるのと同時に、魅力的なプランを作っていくことが目先の目標です。まだまだ進出できていないエリアがたくさんあるので、幅広いエリアで最高の体験を創出していきたいです。
一方でレストラン側に目を向けると、オンラインでの在庫管理がまだまだ未成熟という課題もあります。今後は在庫管理をより円滑にできるよう、管理画面の機能を拡充し、レストラン側に提供していきたいと考えています。
また、ギフトモールと連携した“お祝いアイテム”は新たな差別化ポイントとして力を入れています。花束や2人の写真付きメッセージカードなど、お祝いの場を彩るアイテムをギフトモールのアセットを活用して用意し、予約当日レストランにお届けするサービスです。
プロポーズに花束を渡したいけど、レストランの近くにお花屋さんがなかったり、持ち込むと見つかってしまったり。諦めてしまうケースってあると思います。花以外でも、例えばレストランで席に着くと2人の写真にメッセージが添えられていたり、個室に風船が飾られていたり…そんな演出ができたら理想ですが、レストラン側からすると運用面での課題もあります。
こうした通常のレストランでは対応しきれない部分を、ギフトモールというプラットフォームを活用し、実現していきたいと考えています。現状、お祝いアイテムの扱いがあるレストランは限られているのですが、もっともっと装着を促して普及率をあげていきたいです。
−まさにギフトモールのアセットがあるからこそ提供できる体験ですね。
そうですね。ギフト×体験には、まだまだ無限の可能性があると思います。例えば旅行と掛け合わせたお祝い体験も素敵ですよね。ホテルにステイしてお祝いディナーをして、部屋に戻ったらバラの花が飾られている。本当に色々なことができる領域だと思うので、唯一無二のプランを作り上げて全国で展開していきたいです。
《ギフトモールでは一緒に働く仲間を募集しています!!》
https://open.talentio.com/r/1/c/careers.giftmall/homes/3958